甘酒は日本の伝統的な甘味飲料。この市場が5年で5倍になっていると聞くと、意外だという印象を受ける人も多いのではないか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏がレポートする。
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マルコメ、ハナマルキなど長野県の大手味噌メーカーが甘酒に本気で乗り出している。7月下旬には、女優ののんが出演するマルコメ糀甘酒の新テレビCMが公開。今年の春先にはハナマルキがほんのり琥珀色、透明なタイプの「透き通った甘酒」を発売されている。
国内の甘酒市場は現在、大きく伸びている。2017年の売上は223億円。実に2012年の約5倍という驚異的な成長市場であり、とりわけ麹を原料とするメーカーは成長する甘酒市場との親和性が非常に高い。
ハナマルキは2017年に初めての甘酒商品として500ml×400セット限定で自社サイトを通じて販売したところ早々に完売。今年、サイズなどを見直し、満を持して甘酒市場へと本格参入した。
同じく長野県のひかり味噌も2017年から甘酒市場に本格参入。本来、味噌は仕込んで数か月以上寝かさなければ商品にならないが、糀は水を加えて温めれば数時間で甘酒になる。同じ原料でも味噌に比べて甘酒は現金化しやすく、扱いやすい商品なのだ。
この構造は、蒸留酒メーカーにおけるウイスキーとクラフトジンの関係にも似ている。熟成に時間がかかるウイスキーを寝かせている間に、蒸留すればすぐ販売できるクラフトジンでつなぐ。同業界の生産者や生産物が増えれば、棚の専有面積やメディア露出も相乗効果で増え、トレンドの腰は強くなる。
のんをCMのキャラクターに起用したマルコメは、新工場を作るほどの気合の入れっぷり。マルコメももともと長野県の会社だが、今年の春、完全子会社である魚沼醸造の新工場を新潟県魚沼市にオープン。長野県外に初の製造拠点を置くことになった。一般向けスペースのサロンには工場直送の糀甘酒や、甘酒で甘みを加えたソフトクリームなどを提供。ライブラリーも併設し、予約制ながら工場見学も受け付けていて、観光型の工場で新たな展開を目指している。