香港では6月以降、逃亡犯引き渡し条例の改正案に反対する若者らと警官隊との衝突が毎週のように起きている。そんななか、親中派からは若者らの過激な行動を批判する声も出ているが、香港紙『香港経済日報』の石鏡泉・副社長がデモ参加の若者について、「子どもを教育するのに鉄パイプで叩いてもかまわない」などと発言。それにより、「暴力容認だ」などとの強い批判を受け辞任に追い込まれた。
『香港経済日報』は親中国系紙『大公報』や『文匯報』と違い、いわば中立系紙で経済専門紙だが、中国に批判的な記事も少なくない。それだけに、同紙副社長である石氏の発言は香港メディアが中国寄りになっていることを示しているようだ。
石氏は7月下旬、香港市内で行われた親中派グループ主催する集会「守護香港」に来賓として出席。条例改正案反対デモなどについて、「中国や香港を混乱に陥れようとするアメリカの指図を受けて実施されており、アメリカの親分は中国が死ねばよいと思っているのだ」などと主張。続けて、冒頭の「子どもを教育するのに鉄パイプで…」などと述べたことから、過激な行動を取る若者らに対して、暴力も辞すべきではないと受け止められる発言とみなされた。
ところが、ちょうどこの発言の翌日、正体不明の白Tシャツ集団が香港市内の地下鉄駅構内で、デモ参加の若者らを取り囲んで、鉄パイプなどを使って暴行を加える事件が発生した。1人の重傷者を含む45人が負傷したことから、石氏とTシャツ集団との関連が取りざたされるようになった。
このため、香港の市民団体はインターネット上で、市民への暴力行為をあおったとして、同紙を含む同社傘下の新聞や雑誌の不買運動を呼びかけた。