女として生きていると、モヤることばかり!」――妻が活躍すると夫はかわいそう? 男女平等と男女同等の違いとは? 女が日常で感じるあらゆるモヤモヤを言語化した対談集『女に生まれてモヤってる!』。その著者であるコラムニストのジェーン・スーさんと脳科学者の中野信子さんによる刊行記念トークイベントが、HMV&BOOKS “HIBIYA COTTAGE(日比谷コテージ)で開催された。女であること、男であることにモヤっている日々から脱するためのヒントが満載です!
* * *
中野信子(以下、中野):最近になって明らかに「女は損をしている」という現実が可視化されてきましたよね。いざとなったら男に養ってもらえるから、レディースデーであるから。これまではそういった理由で「女は男よりも得だ」と言われたりもしてきましたが…。
たとえば、医学部不正入試問題。女というだけで一律減点されていたという現実を前に、女は頑張っても無駄なんだとがっかりする気持ちになりますよね。同じ立場の男性側だって悔しいでしょう。自分たちの頑張りが勝手に下駄を履かされたことになって、本当の実力で評価されているわけではなかったということになるのだから。
ジェーン・スー(以下スー):あれは本当にしょんぼりしちゃいますよね。女子受験生に対しても男子受験生に対してもひどい。しかもその後、芋づる式に続々と出てきましたから。不正に至った背景に「女性医師の離職率が高いからだ」という声がありましたけど、そもそもなぜ女性医師が少ないかというと、産後に戻ってこられるシステムが整ってないからではないでしょうか。
年代別の医師の就業率を比較すると、性別で最も差が開くのが30代後半だそうなんですね。男性医師の就業率が89.9%に対して、女性医師は73.4%にまで落ち込みます。出産・子育ての時期に入ると、どうしても第一線から離れないとやっていけない仕事になっている。そこで多くの女性は「私の努力不足だ」とか「女だから仕方がない」自分を責めたり諦めたりしてしまいがち。でも実はそれって個人のせいじゃない。仕組み、システムのバグの問題なんですよ。
中野:「頑張りきれていない女が悪い」ではなく、「頑張りきれない社会の仕組み」のほうに問題があるかもしれない可能性を考慮してみるべきでしょう。なぜなら、国際比較してみれば、女性医師が男性医師以上に活躍している国がいっぱいあるから。
スー:そう、気になって調べてみたら、女性医師が多い国ってたくさんあるんです。1位はラトビアだそうで、医師全体のうちなんと74%が女性医師という。
中野:すごいね。4人のうち3人は女性の医師なんだ。日本は女性医師の割合は全体の20%ですね。
スー:旧共産圏は女性医師のほうが多い傾向にあるみたいですね。でもね、ラトビアって西洋や米国に比べて医師の給料がそんなに高くないらしいんですよ。そこはなんかしょぼーんな感じですけどね。給与が高かったらこうなっていたか?と。ただ、女性だからできない、ということはないわけです。他の国ではできてるんだから。社会の至るところにそういったバグが埋め込まれているんですよね。そういうあらゆるシステムのバグについて中野さんと話し合ったのが、『女に生まれてモヤってる!』という本です。
◆女と男が同等に働く=男女平等ではない