80年以上にわたる日本のプロ野球の歴史の中で、「史上最高の選手」は誰か? 「誰が史上最高のプロ野球選手かと聞かれても、答えに困りますよね……」。そう話すのは辛口評論で知られる江本孟紀氏(現役/1971~1981年、所属/阪神ほか)。
「直接対決していない選手同士を比べるのは難しい。もちろん、プロ野球は結果がすべてだから、前人未到の通算400勝という記録を打ち立てたカネさん(金田正一氏=現役/1950~1969年、国鉄ほか)が投手では一番ということになるが、私も投げている姿は子供の頃にテレビで見ただけやからね。
まぁ、それでもカネさんは外せないでしょう。とくに弱小球団の国鉄であれだけ勝っていることが凄い。打線の援護がなくても自分で打つ。ピッチャーで38本塁打ですから、“元祖・二刀流”ですよ」
世代を超えた比較は難しいとする江本氏だが、ファン投票をもとに〈歴代最高の投手は大谷翔平(2013年~、現エンゼルス)〉といった内容を放送するテレビの特番などには、「そんなバカな話はない」と憤る。
「数年やっただけの選手が歴代1位だなんて、おかしいでしょう。それに、カネさんは“走れ走れ”の前時代的な野球の権化みたいに言われているが、50年以上前からミネラルウォーターを愛飲するなど、体のケアに何より力を注いでいた。先見の明があった人なんだと思う。
あとは自分の同世代で言えば、江夏豊(現役/1967~1984年、阪神ほか)が凄かったね。少し下の世代の小松辰雄(現役/1978~1994年、中日)や鈴木孝政(現役/1973~1989年、中日)、山口高志(現役/1975~1982年、阪急)も速かったが、“打席で球が見えない”と感じたのは江夏だけ。ただ、それでもカネさんの半分の勝ち星(通算206勝)ですからね」
※週刊ポスト2019年8月16・23日号