近年、甲子園での全国大会に劣らぬ注目を集め続けているのが、北大阪大会における大阪桐蔭と履正社の対戦だろう。今年は、大阪桐蔭が準々決勝で敗れて直接対決はかなわなかったが、履正社が3年ぶりに夏の甲子園大会に戻ってきた。7日に行われた1回戦では茨城・霞ケ浦に11対6で快勝。5本塁打を放つなど、強力打線が勝利を呼び込んだ。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、地区大会で大阪桐蔭から敗れて1年、履正社が積み重ねてきた打線の強化についてレポートする。
* * *
昨年、春夏連覇を達成した大阪桐蔭を最も苦しめたのは、北大阪大会の準決勝で対決した履正社だった。
根尾昂(現中日)や藤原恭大(現ロッテ)らを擁した最大のライバルとの大一番に、岡田龍生監督は、1年春以降、投手経験のなかった濱内太陽(現筑波大)を先発マウンドに送る「大博打」に出る。
これが奏功し、大阪桐蔭打線は併殺の山を築く。履正社は9回2死まで1点リードしながらも、濱内が4者連続四球の押し出しに、適時打を浴びて力尽きた。
その試合で捕手を守っていた現主将の野口海音(みのん)は、「一球の怖さを知った」と振り返る。
昨年のリベンジは、大阪桐蔭が準々決勝で金光大阪に敗れてかなわなかったが、決勝では同校を強力打線で粉砕。3発の花火を打ち上げた。
「例年より筋力トレーニングに時間を割いた。それが打線の強化につながったと思います」(岡田監督)