セ・リーグは、首位を独走していた巨人の大失速でDeNA、広島と三つ巴の様相を呈してきた。思い起こせば、巨人は長嶋茂雄監督復帰2年目の1994年もオールスター前まで独走しながら、夏場に成績を落とした。まさに、今年の状況と酷似している。
1994年、開幕戦で2年目の松井秀喜、40歳の落合博満がアベックアーチを放ち、斎藤雅樹の完封で広島を11対0で破る幸先の良いスタートを切った巨人は、4月を13勝6敗と開幕ダッシュに成功。5月18日の広島戦では槙原寛己が完全試合を達成するなど、桑田真澄を含めた3本柱を中心に安定した戦いを見せ、6月28日には2位・中日に10ゲーム差をつけて独走状態に入っていた。
しかし、7月に9勝12敗と負け越し、徐々にゲーム差が縮まってくる。8月25日から9月3日まで8連敗を喫し、2位と3ゲーム差まで追い詰められる。8連敗中は、全て2得点以下しか取れず、完封負け3度と貧打に喘いだ。連敗を脱した9月6日の横浜戦では、松井と落合のアベックアーチなどで4点を奪い、先発・ジョーンズが7回1失点に抑え、橋本清―石毛博史の『勝利の方程式』で逃げ切った。野球担当記者が話す。
「この状況が、今年と似ているんですよ。今年の7月31日の広島戦から8月6日の中日戦までの6連敗の間は2得点以下が5試合と打線が奮わなかった。連敗を脱した7日の中日戦では外国人投手のメルセデスが先発し、試合を作った。打線は若武者の岡本和真が2安打でチャンスメークし、40歳の阿部慎之助が2ランを放ち、勝利に貢献。負けが込んでいる状態では、日本人投手と比べれば外国人投手のほうがプレッシャーを感じないし、やはりベテランの力がモノを言う。25年前と同じような展開でした」(以下同)
1994年の巨人は9月下旬にも4連敗を喫するなど不安定な戦いが続いたが、10月8日の最終戦で同率に並んだ中日との大一番を制し、4年ぶりの優勝に輝いた。
「終盤、満身創痍の落合は5番降格を味わうなど不振に苦しみましたが、10.8決戦で先制ホームランと決勝タイムリーを放つなど勝負所で活躍した。今年、この役割を担うのは、当時の落合と同じ40歳の阿部でしょう。7日の試合でも、23試合ぶりのスタメンで一発を放つなど勝負強さは健在。今年、いまひとつ調子に乗り切れない岡本を5番打者としてカバーできるのは、長打も打てる阿部しかいない。阿部が打てば、岡本の負担も軽減され、岡本の打棒復活の期待もできる。2人が1994年の松井と落合の関係を構築できるかどうかに、今後の巨人打線は懸かっています」
史上稀に見る大失速を見事にドラマに変えた1994年の長嶋ジャイアンツのように、2019年の原ジャイアンツも踏ん張れるか。