超難関中学に進学した女優・芦田愛菜(15)が読書愛を語る著書『まなの本棚』が、発売早々ベストセラーに。孫を本好きにしたいと願う祖父母世代が多く買い求めているというが、ではどんな本を孫に読ませればいいのか──。作家の逢坂剛氏(75)が勧めるのは、『クオーレ』(デ・アミーチス著/和田忠彦訳)だ。
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孫はもうすぐ4歳になるのと、1歳になったばかりの二人。本というと、今は「むかしのご本、読んで」と、資料として置いてある江戸時代の図録なんかを一緒に見たりしています。
小学生になったら読んでほしいのは『クオーレ』ですね。デ・アミーチスというイタリアの作家が書いた小説で、多くの出版社から翻訳されてきた古典の名作です。低学年でも読めるんじゃないかな。
毎日の学校生活を綴った少年の日記と、先生による「今月のお話」で構成されていて、これが本当にいい話ばかり。何回読んでも泣いちゃうんだよ(笑い)。「母をたずねて三千里」の原作もこの本の中のひとつの話で、家族の絆や、親子の愛情なんかが描かれている。
一方で国のために命を落とす少年監視兵の話など、愛国的な話も多い。この本が書かれた1886年とは時代が随分違うし、今の時代、人や世(国)のために何かをするなんてくだらない、バカバカしいと批判する人もいるかもしれない。
でも、私はこの本を読んでくだらないという子供はいないと思う。『クオーレ』に描かれているのは、人間が持っている根源的な思いやりや優しさ。孫にはこの本からそれを学んでほしい。そして、できれば何度も読み返してほしい。そうすることで人間として成長できる小説だと思います。
※週刊ポスト2019年8月16・23日号