韓国経済が世界に誇る代表と言えばスマホシェア世界1位のサムスンだが、その労働環境への批判が世界では高まっている。
ベトナムの市民団体CGFEDと国際環境団体のIPENの調査によって、ベトナムにあるサムスンの工場では失神や生理不順が相次いでいることが発覚。それをまとめた報告書を受けて昨年3月、国連が「国連人権専門家たちが労働環境について憂慮を示した」との声明を発表した。さらに国連は「報告書の発表以後、サムスンが『外部の人にサムスン内の労働環境について話せば訴訟を起こす』として、労働者を脅迫した疑いがある」とし、「これについてもサムスンに説明を要請した」と明らかにしている。
次いでフランスでは、パリ地裁がアジアの労働者の労働基本権侵害などを理由に、サムスンを起訴した。フランスには「フランス企業の人権実践責任法」という法があり、国外で起きた労働権侵害にも責任を問うことができるという。
人権問題で日本を批判してきたはずの韓国が、いまや人権問題で国際社会から追い詰められているのが実情なのだ。
だがこうした事実は、韓国国内で知られることがほとんどない。韓国事情に詳しいジャーナリストの河鐘基氏は言う。
「韓国では、(日本の対韓輸出管理強化をめぐる)WTO提訴問題についても徴用工問題にしても、海外で報じられたことであっても自国にネガティブな内容の場合はほとんど報じられることがありません。ハンギョレ新聞など一部メディアがライダイハン問題(*注)やサムスン問題などを取り上げていますが、それも一般の人の目に触れることはほとんどありません」
【*注:ライダイハンとは、ベトナム戦争中に派兵された韓国軍兵士がベトナム人女性に生ませた子供のことで、最大3万人とも推計されている(韓国「釜山日報」)。なかには、強姦によるものも多く含まれており、韓国軍による「戦争犯罪」として一部では問題視されてきたが、韓国政府が黙殺してきたこともあり、広まることはなかった】
こうしてますます、韓国と世界の認識は乖離していくことになる。「世界で最も韓国に甘いのが日本だ」と言われるようになる日も近い。
※週刊ポスト2019年8月16・23日号