「世紀のロイヤルウエディング」から26年。日本、世界の各地をご公務で訪れた雅子さまは、平成から令和に替わり、皇太子妃から皇后になられた。国民と共に歩み、慈しむ、そのお姿は、新たな時代が始まってから3か月経ってなお一層輝きを増している。雅子さまが旅した軌跡を追い、天皇陛下と、愛子さまと過ごされた宿を紹介する。
■萩城三の丸 北門屋敷
(ご滞在日:平成5年7月28日)
住所:山口県萩市堀内210
ご成婚から約1か月後に両陛下が宿泊された旅館は、世界文化遺産にも登録された萩城下町・旧上級武家地の中心に位置する江戸時代の面影を残す宿。総支配人の田村文子さんは、当時をこう振り返る。
「ご宿泊の2年前、宮内庁から皇太子殿下がご宿泊になると連絡があり、器を焼くところから準備を始めました。その後、人数がおふたりに。ご成婚祝いという改まった形式にする必要はないと言われましたが、お料理に手長えびや地酒など萩の食材をふんだんに使用し、お祝いの気持ちを込めました」(以下同)
その年も長雨が続き、宿泊された『桂月』の庭には蛙の大合唱が。
「お食事の際、雅子さまは『話すと鳴き止み、会話が止まると一斉に鳴きだしますね』と蛙の様子に驚かれていました」
武家屋敷らしい重厚な門をくぐると、中には四季折々の花が溢れる英国風庭園が広がる。改装はされたものの、今も当時と変わらず庭園を望む温泉露天風呂を楽しめる。
両陛下のお食事のため、旅館が持つ窯元で萩焼の器を焼き、日本酒の盃も作った。
「雅子さまもとても喜んでくださいました」
●教えてくれたのは…
文筆家・竹内正浩さん/JTB勤務を経て、文筆家、歴史探訪家として活躍。旅を通じて国民に寄り添った上皇上皇后両陛下の30年間の歴史を凝縮した『旅する天皇』(小学館刊)など。
※女性セブン2019年8月22・29日号