知らず知らずのうちに、健康に対してリスクがあるものを摂取している可能性がある。たとえば、サイコロステーキなどの「成形肉」。加工肉の一種に含まれる成形肉について食品ジャーナリストの郡司和夫さんが解説する。
「成形肉とは、加工処理して作られた肉全般を指します。サイコロステーキは別名で『インジェクション霜降り加工肉』といい、安い牛肉の端切れや、くず肉などを集めて、固めています。くず肉とは、内臓や骨にこびりついている、本来は食用にしない肉のことです。
何百本もの注射針がついたインジェクション加工用の機械で、くず肉に牛脂やリン酸塩などの結着剤や化学調味料などの添加物を注入します。それを混ぜ、冷凍して固めるとサイコロステーキになるのです」
記録的な猛暑が続く今の季節に、成形肉で起こりうる危険が腸管出血性大腸菌O-157だ。消費者問題研究所代表の垣田達哉さんが指摘する。
「もともと、O-157の菌は肉の表面につきますが、インジェクションや、筋切りなどの加工処理を行うと、菌が肉の中まで入り込んでしまいます。O-157の菌は75℃で1分間加熱すれば死滅しますが、焼き加減が甘いと食中毒を起こす危険が高い」
郡司さんは、特に外食が危ないと語る。
「スーパーなど店頭で売られている肉が成形肉の場合は、それを表示すること、そして、“中まで火を通してください”との注意書きが義務づけられています。しかし、外食の場合には表示義務がありません」
サイコロステーキだけでなく、ステーキやしゃぶしゃぶの肉にも成形肉が使われていることがあるが、見た目で見抜くのは困難だという。
「今は技術が進んでいて、プロでも見分けるのは難しい。破格のしゃぶしゃぶ食べ放題や激安ステーキなど、常識的に考えてあまりに安すぎる店は警戒して。店員に成形肉かどうかを確かめ、しっかり中まで火を通すようにしてほしい」(郡司さん)
群星沖縄臨床研修センターのセンター長で医師の徳田安春さんは、「栄養面から考えると、加工肉を食べる必要はない」と断言する。
「加工肉は、一様に塩分が過剰に含まれています。日本人は諸外国に比べて塩分の摂取量が多いとされ、1日の摂取上限をはるかにオーバーしています。塩分の摂りすぎは心臓病や脳卒中のリスクを高めます。たんぱく質は加工肉ではなく、魚や大豆などから摂るべきです」
百害あって一利なしだ。
※女性セブン2019年8月22・29日号