若者を中心に大流行のタピオカ・ドリンク。南米やアフリカでは、タピオカは主食としても食べられてきた。1万年に及ぶというタピオカと人類の長い歴史を、作家の島崎晋氏が解説する。
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台湾発のタピオカ・ドリンクが若い女性を中心に人気を集めている。台湾通のあいだではかなり前から知られていたが、昨今の台湾旅行ブームの影響で広く日本人全体にも広まり、これは商売になるというので、専門店に限らず、どこもかしこも手を出すようになったのだろう。
この爆発的な流行を見て、40代以上の人はおよそ30年前のナタデココ・ブームを思い出したのではなかろうか。ナタデココはフィリピン発のスイーツで、一時はどんな料理店でもデザートのメニューに加えたほどだった。そのブームは2年ほどで終わってしまったが、タピオカ・ブームもそれと同じ運命を辿るのかどうか、興味のあるところである。
ナタデココとタピオカはモチっとした食感が似ていて、どちらも南国イメージが強いが、原料はまったく違う。ナタデココがココナッツを原料とするのに対し、タピオカはキャッサバというイモを原料としている。
キャッサバの原産地は南米大陸で、人工栽培が開始されたのは今から4000年ほど前だが、野生種は人類が同地に到達した1万数千年前頃から食用にされていたはずで、ジャガイモと並び主食の双璧を占めていたものと考えられる。
イモ類であるから、食用にされたのはその地下茎部分。そこから摂れるデンプンがタピオカである。
南米のアメリカ先住民は地下茎のままを茹でて食べたが、大航海時代にそれが伝えられたアフリカや東南アジアではいったん潰してからパン状に形を整えて焼くなど、タピオカに何らかの加工を施すのが普通となった。東南アジアではスイーツの域を出ることがなかったのに対し、アフリカのサハラ砂漠以南ではキャッサバかトウモロコシのどちらかが主食の座に収まることとなった。