ビジネス

日本の電力政策に秘策あり 水力の発電量は2倍にできる

利根川水系にある矢木沢ダム。左下に見えるのが水力発電所だ(時事通信フォト)

 夏場の電力ひっ迫による節電の呼びかけも今は昔。むしろ、猛暑が続くなかで熱中症予防として適切なエアコンの使用を呼びかける声のほうが大きいが、需給のひっ迫が完全に解消されたわけではない。原発の再稼働が一向に進まないなか、足りない電力を補うため電力会社は天然ガス・石炭火力発電の増設を続けてきた。原発事故前までは電力供給で火力の占める割合は6割ほどだったのが、今や8割までに増えている。気候変動(地球温暖化)の議論はどこかに追いやられ、日本の社会は化石燃料に、というより中東に依存して、大きな地政学的リスクを抱え込んでいる。

 そんななかで2016年8月に発刊された1冊の書がある。タイトルは『水力発電が日本を救う 今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる』(東洋経済新報社)。著者の竹村公太郎氏は、元国交省河川局長で、川治ダム、大川ダム、宮ヶ瀬ダムの3つのダム建設事業を担当したという。竹村氏は、水力発電の発電量を現在の2倍にも3倍にもできる方法があると主張する。水力は日本の電力供給の1割弱を担っているが、2~3割にまで増やせるというのだ。

 水力発電はダムで貯めた水を放水するときに発電するしくみで、再生可能エネルギーの一つだが、太陽光や風力にはない特徴がある。環境問題が専門で、元国連大学副学長の安井至・東大名誉教授はこう説明する。

「太陽光や風力は天候に左右される不安定な電源ですが、水力はダムに水が貯まっている限り、必要なときに発電できる安定した電源なので、価値がまったく違います。それならもっと水力を増やせばいいと思うかもしれませんが、そうはいかない。日本のほとんどの大河川にすでにダムが建設されていますし、中小河川に環境負荷の小さい中小水力を設置するという取り組みも、水利権や漁業権が複雑に絡み合ってなかなか進まない。ですから、水力(の発電量)を伸ばすのは難しいというのがこれまでの常識でした。もし本当に発電量を2~3倍にできるのなら、非常に画期的と言えます」(安井名誉教授)

◆ダムの貯水量を柔軟にコントロールする

 しかし、水力はもう限界と考えられていたのに、いきなり2倍以上にできるなどと言われたら、“そんなうまい話があるのか?”と疑うのが当然である。では、いったいどんな方法を使えば、水力が2倍以上になると言うのか。著者の竹村公太郎氏に訊いた。

「新規に大規模ダムを建設する必要はありません。そもそも、もうそういう時代でもない。方策としては3つあります。第一には『多目的ダムの運用の仕方を変える』、第二には『ダムのかさ上げをする』、第三には『発電整備のないダムに発電設備をつける』。この3つを合わせれば水力の発電量は2~3倍になります」

関連記事

トピックス

天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン