神奈川・横須賀市のバリアフリー子育て情報局『sukasuka-ippo』(以下『ippo』)は、同市の療育(障害児対象の幼稚園)相談センター『ひまわり園』の保護者会役員7名が立ち上げた一般社団法人だ。現在は障害のある子とない子が放課後一緒に過ごせるインクルーシブ学童『sukasuka-kids』(以下『kids』)とインクルーシブ託児『sukasuka-nursery』(以下『nursery』)の運営も行い、インクルーシブ教育の先駆けとして注目を集めている。
「インクルーシブ」とは、「包括的な」「包み込む」を意味する。松村愛さん(32才)は2人の障害児をもつシングルマザー。小学2年の長男・波空くん(はく・7才)は軽度の発達障害をもち、小学校では普通級と支援級(国語、算数)の両方に通い、『kids』にも通っている。弟の青空くん(そら・5才)くんは軽度発達障害と知的障害がある。青空くんも小学校に上がる来年から『kids』に通う予定だ。
「保育園までは、『障害があるから仕方ない』『いいよ、いいよ』と、何をしても許されることが多かったんですが、小学校や学童に通い始めると、していいこと、悪いことを学んで、理解して吸収しています。この1年でかなり成長しましたね。さらに、学童で重い障害のお子さんや障害のないお子さんとまぜこぜで過ごすことで、子供の多様性も育まれているようです」(松村さん・以下同)
子供の成長もそうだが、親である松村さん自身にとっては『kids』は心の拠りどころだと話す。
「3才で息子の発達障害がわかって、受け止めて認めるまで3年かかりました。その間はもう泣いて泣いて…。自分を責め続け、でも受け入れなきゃいけなくて…かなりの葛藤がありました。気持ちを切り替えたつもりでも、子供たちの起こす行動をいつもニコニコ受け入れられるわけじゃない。イライラも募ります。そんな時に『どんなことでも話してくれていいよ』って言ってくれるこの場所に救われました。
とはいえ、誰にでも相談できるわけじゃない。障害児を育てた経験のある人だから気持ちを理解してもらえる。安心して話せます。息子の行動が荒れると、『愛さん、大丈夫? 疲れているんじゃない?』と逆に声がけされて、自分のゆとりのなさにハッと気づかされることも。心をリセットできる一言がありがたい」
母親が笑っていれば子供もうれしい。学童には母親の笑顔を増やす場所としての役目もある。
「息子はパッと見た目には障害児だとわかりづらい。ルールが守れないと『なんでちゃんとしつけをしないんだ!』と怒鳴られることも多いんです。その都度『すみません』を繰り返しながら、心の片隅で『私、悪いことしていないのに…』と。障害児の親は日々そんな思いで過ごしてます。もっと障害に対する認知が上がれば白い目で見られることも少なくなるのに」
世間で障害児について正しく理解されているとは言い難い。誰もが障害児や親の気持ちに寄り添えるようになるには、障害の実態が社会に広まる必要性がある。
※女性セブン2019年8月22・29日号