ただでさえ平常心を失いそうな災害時、認知症の親を支える子供世代はどんなことに気をつけたらよいか。
東日本大震災の被災地で配布された冊子『避難所でがんばっている認知症の人・家族等への支援ガイド』によると、認知症の人は人一倍ストレスに弱く、避難所でも混乱して心身状態が悪くなりやすいという。冊子は認知症介護情報ネットワークのHPからダウンロードできる。
「静かな環境の確保」「ゆっくり少しずつ話しかける」など、具体的なアドバイスや対応のコツが盛り込まれているが、制作に携わった認知症介護研究・研修東京センター研究部部長の永田久美子さんは、さらに解説する。
「多くの介護者から、災害時、認知症の人は意外に落ち着いていて、逆に災害の経験などを教わったという話も聞くのです。混乱のスイッチを入れてしまうのは、心配のあまり焦る周囲かもしれません。認知症は“本人の力を大切に”が鉄則。何かしてあげようと気負わずに、ゆっくり添うように対応してください」
そしてやはり静かな福祉避難所への移動が望ましい。
「認知症は一見してわかりにくいので、家族や本人からきちんと表明し、福祉避難所への移動や、配慮とお願いをすることも大切です。そのためにも“ヘルプカード”の携帯をおすすめします。
本人と相談しながら、具体的に助けてほしい内容を書き、必要に応じて見せます。認知症の人は焦ると言葉が出にくいことも多いので、意思を端的に伝えることで周囲も理解して支援しやすく、実際にうまくいくケースが増えています」(永田さん)
前向きにSOSを発信するきっかけに。本人に合わせた手作りのヘルプカードを、災害時だけでなく普段から持っておこう。
イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2019年8月22・29日号