情報化社会の一方で詐欺まがいの行為がはびこるのは万国共通なのだろうか。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏が指摘する。
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違法広告といえば、日本の都市にもあふれている。その中身は不動産から風俗産業、あやしい食品まで多種多様。形態も電柱や電話ボックス、壁に貼り付けるモノからマンションのメールボックスに放り込むタイプまで、実にさまざまだ。
この夏、中国で話題になった違法広告は、そんな汎用性のあるものではなかった。ピンポイントを狙った特殊な広告だった。
その殺し文句は、なんと「16万元で必ず男の子を!」。16万元といえば、元が下落した現在のレートでも、およそ240万円。手軽な消費ではない上に事件性も高い。
広告が出され問題となった現場は、海南省海口市の海南医学院第一付属医院。もちろん、広告と病院は無関係であるが、この病院は衛生部が正式に生殖補助医療技術を認めた第一号として知られているため、妊活で苦労する夫婦が集まることで有名だった。
違法広告は、そうした夫婦をターゲットにして「若い優秀な大学生が精子を提供」、「代理出産」、「試験管ベイビーで男の子」といった煽り文句で誘っていたという。
国内で多くのメディアが報じたが、なかでも詳しく報じたのが『工人日報』で、実際に客を装い業者とも接触している。
その内容によれば、広告にある番号に電話をすると、出た男は「(試験管での産み分けの)値段は、一世代前の技術なら11万元(約165万円)で、最新式なら16万元」だといい、「広東省広州駅でこの電話に再度電話かければ、誰かが迎えに来る」という、なんとも怪しいシステムだった。
いずれにしても中国社会では相変わらず男の子に対するニーズが強いのだが、その理由は、「一人っ子政策が緩和されても、経済的な理由から2人目を諦める夫婦が多く、一人ならば男とのニーズがあるから」だという。