懲りない人々はどこにでもいる。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国江蘇省中西部に位置する淮安市の農村で、いくつもの鶏舎から鶏が大量に消えてしまうという事件が起きたのは、2018年の年末のことだった。やがて容疑者として逮捕されたのは、同じ淮安市に暮らす蒋という56歳の男だった。
なんてことのない中年の家畜泥棒が起こした事件だったが、蒋の逮捕は間もなく全国のメディアの注目を集めてしまうこととなった。
というのも、この蒋という泥棒、なんとも奇妙な経歴の持ち主だったのだ。まず、1999年から今日に至る20年間、一度もまともな職業に就いたことがなく、ただ泥棒することだけで生活してきたという、厚かましい男なのである。
だが、特徴はそれだけでない。蒋が盗むのは、「鶏だけ」であり、それ以外のものを盗むことはなかったという。
事件を伝えた『江蘇新聞』(2019年6月1日)は、「鶏専門の泥棒」、「鶏泥棒中毒」という言葉さえ使って表現している。事実、鶏だけを狙っていることで、過去には8度も逮捕されている。それなのに相も変わらず鶏を盗み、今回も御用となったのである。
しかも今回の逮捕後には、警察で、「オレは鶏の言葉が解る」と自慢したというから筋金入りだ。