もし大型台風が東京オリンピック真っ最中の首都圏を直撃したら、一体どんなことになってしまうのか。オリンピック憲章で、競技大会の実施期間は16日間を超えてはならないと定められているため、たとえ競技日程を順延したとしても、全日程を8月9日の閉会式までに終わらせなければならない。
東京五輪では男子マラソンが、全競技の「トリ」として閉会式当日の「競技実施16日目」に行なわれる。つまり延期は絶対にできない。
「そのため他の競技に比べ、強行開催のリスクが非常に高いといえるでしょう。もともと高温多湿の夏に開催されることで熱中症が懸念されていますが、雨風もランナーを苦しめる大きな要因になる。強い風雨は大きな抵抗になる上、体を冷やして体力を消耗させるため棄権する選手が続出する。もっと恐ろしいのは転倒や落下物。選手だけでなく、沿道の観客にも命の危険がある」(スポーツ紙東京五輪担当チーフ)
2018年の平昌五輪でも、強風の中でスキージャンプ・スノーボードなどを強行し、極寒のなかで観客が長時間待たされたり、選手のパフォーマンスに影響が出た。東京都の招致活動で推進担当課長を務めた経験のある鈴木知幸・国士舘大学客員教授がいう。
「こうしたスケジュール優先の強行開催は“選手ファースト”からかけ離れている」
さらに、五輪のハイライトといえば「新記録達成」の瞬間だ。特に今大会では陸上競技に日本代表の有力選手が目白押し。
「サニブラウン・ハキームや桐生祥秀が100m走で9秒台」
「男子400mリレー、日本新記録で金メダル」
──しかし台風がもたらす強風は、そんな期待も吹き飛ばしてしまいかねない。