かつて作家・五木寛之氏に「“演歌”でも“援歌”でもない。“怨歌”である」といわしめた歌手・藤圭子(享年62)。彼女が儚く散ったあの日から、はや6年。生きていれば今年9月にデビュー50周年を迎えていた。6度目の命日を前に、元夫でもある歌手・前川清が再び知った彼女の魅力。短くも1970年代の歌謡界を共に過ごした日々を語った。
「歌いながら、やっぱり彼女のドスのきいた歌声と独特の世界観って凄いなぁと改めて感じさせられました」
そう語るのは、歌手の前川清(71才・以下「」内同)。先月発売された自身のカバーアルバム『マイ・フェイバリット・ソングス~ジャパニーズ~4』のなかで、元妻の藤が1972年に歌ったヒットナンバー『京都から博多まで』をしっとりと歌い上げている。
「この曲が流行っていた頃って、ちょうど藤さんと結婚していた時期。一緒に歌番組に出演したりして、目の前でよく聴いていました。だから、耳が覚えている。自分ではもうちょっとうまく歌えると思って、あえて音源は聴かずに収録に挑んだんですが、思っていた以上に難しかったですねぇ」
これまでライブなどで同曲を歌ったことは何度かあるが、CDに録音するのはこれが初めて。
「歌というのは、歌っている人が亡くなった直後は頻繁に流れるけれど、1週間もすると遠ざかっていくじゃないですか。でも、彼女のよさであるとか魅力だとかは忘れてもらいたくない。別れはしましたけど、彼女に対しての思いっていうのはそりゃあ、ありましたからね」
ファンだった人に、少しでも喜んでもらえたら、当時の藤圭子の姿を思い出してもらえたらうれしい…。そんな思いから収録を決めた。
◆若き大スターとの結婚 多忙極まる新婚生活
48年前の6月、前川と藤の婚約発表に世間は沸いた。
「ボクが22才で彼女は19才。お互い、好きだという気持ちは当然あるけれど、実はどうしても夫婦になりたいというわけではなかったんです。ただ彼女は、当時、恩師で事務所の社長でもある作詞家の石坂まさをさん(享年71)の自宅に住み込みをしていたので、隠れて会ったりするのはなんだか嫌だね、と。だったら、一緒になった方がいいかもねっていうのが結婚に至った理由でした」
当時は歌謡曲全盛期。藤も、前川がボーカルを務める内山田洋とクール・ファイブもオリコンヒットチャートの上位ランキングの常連だった。
「芸能界でも彼女のファンは多くて、婚約発表後に野口五郎くん(63才)から“なんで前川さんなんかと~!? ボク、好きだったのに~”って言われて、“いや、ごめん、ごめん”って謝ったこともありました(笑い)」