都心部の通勤列車として活躍した電車の中には、地方で「第2の人生」を送っている車両もある。都市部をあくせく走る通勤列車生活から、大自然の中を駆ける観光列車へと転身を遂げた車両を見てみよう。
1971年登場、車内にテレビを設置している「テレビカー」として知られ、京阪エリアの通勤ラッシュをさばいた初代京阪3000系は現在富山で走っている。1990年から複数回にわたり富山地方鉄道に譲渡され、そのうちの1編成は、立山連峰の雄大な景色を車窓から眺められる「ダブルデッカーエキスプレス」として活躍中だ。
1969年に登場して以来長年にわたって西武の顔として活躍した特急電車、西武5000系初代「レッドアロー号」も同じく富山地方鉄道に譲渡され、「アルプスエキスプレス」として同じ区間を走っている。
1963年に京王電鉄が都心の通勤型電車として開発した初代京王5000系は、1994年から富士急行に移籍、そのうちの1編成は改造され、2009年から「富士登山電車」として走る。「富士山に一番近い鉄道」で人気の観光列車だ。
かつての都市圏通勤車両が今も地元の足として多く走っているのは熊本電鉄だ。2015年から運行する熊本電気鉄道01形は、1984年に登場し銀座線を走った東京メトロ01系を譲り受けて改造した車両。銀座線での運行当時の雰囲気を残す計らいがなされている。1995年から運行する熊本電気鉄道6000形も、1968年から都営三田線で活躍した6000形を受け継いだもの。定年退職後に地方移住でもうひと花咲かせるのは人間だけではないようだ。
取材・文/戸田梨恵
※週刊ポスト2019年8月30日号