今年米寿を迎えた六本木の伝説のゲイバー「吉野」のママ、吉野寿雄氏(88)。かつて美空ひばり、石原裕次郎、長嶋茂雄、三島由紀夫など各界のスターたちが集った店として知られる「吉野」で見せた高倉健さんの素顔について、「終活の一環として思い出を記録に残しておきたい」と語った。
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〈江利チエミと離婚してから独身を貫いた高倉健には表立った熱愛報道もなく、女性関係についてはベールに包まれていた。だが、高倉は吉野ママには、自らの「女性観」を明かしていた〉
チエミさんと結婚している頃から、健さんは「なあ、およし。俺は、味噌汁とご飯がうまい女がいればいいんだよ」と、ことあるごとに言っていた。
健さん、チエミさんとの結婚前にも彼女はいたの。まだ大学生の頃、駆け出しの女優と付き合っていたんだけど、その子のことを当時のスター俳優が見初めてしまった。彼女は交際相手の健さんに「今日はコレを買ってもらった」って貰ったものを自慢するようになったの。健さん、「女ってこういうものなのか。だったら俺も金の稼げる役者になってやろう」って俳優になったって。
〈死後、高倉は極秘に一般女性と養子縁組をしていたことが発覚し、大きな話題となった。吉野ママが言う。〉
それを聞いて「ああ、健さん、やっと最後に安らげる場所を見つけた。味噌汁とご飯のうまい女を見つけたんだな」と思った。健さんは大スターになってしまったから、私生活でも「俳優・高倉健」を演じなければならなかったけれども、中身は、純な心を持った“九州のあんちゃん”だった。あちらに旅立った今、(本名の)「小田剛一」に戻って、ゆっくりと過ごしてほしいと思っているのよ。
●取材・文/宇都宮直子
※週刊ポスト2019年8月30日号