がんには大きく4つの治療法がある。「外科手術」「放射線療法」「抗がん剤療法」そしてオプジーボなどで注目を集めた「免疫療法」だ。いま、それらに続く「第5のがん治療」として「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」が注目を集めている。
その特徴は「体への負担が少ない」ということだ。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が解説する。
「BNCTは、がん細胞だけに取り込まれる特殊な薬剤を点滴で投与した後に、患部に体外から『中性子線』という特殊な放射線を照射するという2段階で行なわれます。この薬剤は、中性子線を受けると核反応を起こし、細胞1個分(数ミクロン)だけ破裂してがん細胞を内側から破壊する。そのため、正常な細胞を傷つけることが少ない(図参照)」
すでにBNCTは、喉や舌など頭頚部のがんへの臨床試験を終了している。臨床試験では約7割の患者のがんが縮小したと報告されており、順調にいけば2020年にも承認される見通しと報じられた。
「ほぼ同規模の設備を使う放射線治療に『陽子線治療』があります。2001年に承認されたこの治療は、当初は自由診療(全額自己負担)で約300万円かかりました。BNCTもこれとほぼ同じ金額になるのではないでしょうか。
陽子線治療は承認から15年後に、一部の小児がんなどに限り保険適用になっています。BNCTも2035年頃には適用になるかもしれません」(室井氏)
「がんは切らずに治す」が当たり前の時代がくるか。
※週刊ポスト2019年8月30日号