8月27日(日本時間)よりテニス4大大会の最後を飾る全米オープン(本戦)が開催されるが、過去の世界大会の試合結果を見ると、大会の上位メンバーがいつも同じ顔ぶれに感じないだろうか? 男子シングルスの錦織圭選手をはじめ、日本の選手が健闘して上位の選手を破ることもあるが、多くの場合、ランキング(実力)どおりに勝敗が決まる。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が、そんな“番狂わせ”が起こりにくいテニスの点数カウントの仕組みについて分析する。
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いま、いろいろなスポーツが花盛りだ。特に、点をとったりとられたりする球技は、試合途中の情勢が明確で、観客が盛り上がりやすい。
球技には、大きく分けて2つのタイプがある。1つは、野球、サッカー、ラグビーのように、1プレイごとに対戦しているどちらかのチームに点が入るとは限らないもの。もう1つは、テニス、卓球、バドミントン、バレーボールのように、1プレイごとに必ず対戦しているプレーヤーやチームのどちらかに点が入るタイプだ。
このタイプは「ラリーポイント制」と呼ばれ、ある点数に到達すると、セットやゲームを獲得する。そして、獲得したセットやゲーム数がある数に達すると試合に勝利する。
少し細かい点だが、テニスの場合、ファーストサービスのフォルトは1プレイとみなさず、ダブルフォルトになったときに1プレイとみなす。また、硬式テニスでは、ふつうは1点、2点、3点といわずに、15点、30点、40点というが、ややこしくなるので、ここでは1点、2点、3点と表す。
テニスは、点数カウントの仕組みが複雑だ。先に4点を獲得したプレーヤーがゲームを取る。そして、先に6ゲームを獲得したプレーヤーが、セットを獲る。ただし、ゲームカウントが5-5で並んだ場合は、ゲームを2つ立て続けにとって7-5にするか、もしくは、ゲームカウント6-6で並んでタイブレークという7点先取のゲームをとるとセットを獲得できる。そして、3セットを先に獲得したプレーヤーが勝利する(5セットマッチの場合)。
ここで、デュースという点数カウントの仕組みがある。あるゲームで点数が3-3で並んだ場合は、2点差をつけて上回らないと、そのゲームを獲得できない。また、タイブレークにも、デュースがある。点数が6-6で並んだ場合は、2点差をつけて上回らないと、そのセットを獲得できない(※注)。デュースがあることで、試合の緊張感が高まり、1プレイごとに観客が大いに沸くこととなる。
※注/4大大会のシングルスの試合では、最終セットでゲームカウントが6-6で並んだ場合、決着のつけ方がそれぞれ異なる。全米大会は、通常のセットと同様、7点先取のタイブレーク。全豪大会は、10点先取のタイブレーク。全仏大会はタイブレークを行わずにどちらかが2ゲーム差をつけて相手を上回るまで試合が決着しない。全英大会は、以前は全仏大会と同じだったが、2019年から仕組みが変わった。2ゲーム差がつかないままゲームカウントが12-12で並んだ場合、7点先取のタイブレークで決着をつけることとなった。
実は、テニスの1ゲームのスコアは、確率的に計算できる。これは、1つのゲームを獲得するまでのプレイの回数が、「負の二項分布」と呼ばれる確率分布に従うためだ。これ以後、算式が出てきて、やや難解かもしれない。算式をとばして、後の【計算結果】まで読み進んでいただいても構わない。