ペットが食べ物でない物を誤って口にしてしまうことを“異物誤飲”という。体の小さい猫にとっては、少量であっても命の危機にかかわることもある。猫の誤飲・誤食で多いものとは? 応急処置は? 猫の異物誤飲について説明する。
ペット保険会社のアイペット損害保険が、犬や猫の飼い主329名を対象に行った調査(2018年2月実施)によると、愛犬・愛猫の異物誤飲を経験したことがあると回答した飼い主は88.7%もいた。
そのうち、猫の異物誤飲が起こった場所を調べてみると、1位「床」、2位「キッチン」、3位「テーブルの上」という結果に。つまり、猫がジャンプした時に届く範囲で起こっていることがわかった。
猫が誤飲しがちなものは、
●ひも・電気コード・糸・リボンなど細長いもの
●輪ゴムやヘアゴムなどのゴム製品
●猫用のおもちゃ
●衣類、タオルなどの布類やウール製のもの
●レジ袋などのビニール類
●清掃用品や転倒防止用マットなどのスポンジ製品
●紙製品
●室内に飾られている花や観葉植物
など。
特に猫の場合は、遊んでいるうちに、うっかり飲み込んでしまうことも多いと、獣医行動診療科認定医の藤井仁美さんは言う。
猫は毛糸など、細長いひも状のものが好き。しかし、それらを飲み込んでしまうと、腸管が締めつけられ、腸が破ける危険が。写真はあくまでイメージであり、実際はひも状のものはおもちゃに限らず、猫の手の届かないところにしまおう。
異物誤飲後の主な症状は、食欲不振や嘔吐、元気がなくなるなど。何かを飲み込んだ現場を目撃した場合や、これらの症状に気づいたら、すぐに獣医師の指示を仰ごう。
「無理に取り出そうとすると口の中や食道、胃腸を傷つけたり、喉に詰まらせる恐れがあるので絶対にやめてください。また、誤飲したが元気だという場合も、放っておくと腸に詰まり、命にかかわる危険性が。異物誤飲が疑われる場合は、すぐに動物病院で検査することを強くおすすめします」(藤井さん・以下同)
病院では問診後、超音波検査などで、飲み込んだ物を特定する。そして、「催吐処置」「内視鏡を使用しての摘出」「開腹摘出手術」などで取り除く。
処置が早いほど選択肢は広がり、猫へのダメージも最小限に抑えられる。飲み込んだ物によっては、自然に排泄されるのを待つ「経過観察」という場合もある(ただし、獣医師指導の場合に限る)。
では、猫の異物誤飲を防ぐにはどうしたらいいのか。
遊び終わったおもちゃは引き出しにしまうなど、猫の手の届かない場所に置くこと。そして、キッチンなど、猫にとって魅力的かつ危険な物が多い場所には、柵などを取りつけて入れないようにしよう。
一方で、異物誤飲の原因が“病気”の場合もあるという。
「身体的な病気が原因の場合もありますが、同じ行動を必要以上に繰り返してしまう心の病気“常同障害”が原因の可能性も。この場合、家庭内での対策だけで防ぐのは難しく、専門家による行動診療や薬物治療が必要です。いずれにしても、放っておくと行動はエスカレートするので、異物誤飲を繰り返す場合は、獣医師に相談しましょう」
愛猫を守るためにも、猫目線で誤飲・誤食が起きない環境づくりに努めることが大切だ。
※女性セブン2019年9月5日号