夏に多い病気の1つに帯状疱疹がある。特に高齢者がかかると重篤化しやすく、特有の痛みが10年以上続くこともあるという。しかもリスクが上がるのは50代から。老親だけでなく疲れ気味の介護家族も注意が必要なのだ。
帯状疱疹の原因となるのは水痘・帯状疱疹ウイルス。初期症状は、ピリピリとした痛みやかゆみから始まる。まりこの皮フ科(神奈川県)院長の本田まりこさんに聞いた。
「これは前駆痛と呼ばれ、神経節の中で再活性化したウイルスが、神経を破壊しながら伝って皮膚表面に出てくる痛み。4~5日から1週間続きます。続いて赤い小さな発疹が現れます。神経に沿って出るため、普通は体の左右どちらかに、帯のような形で現れます。
やがて発疹の上に水ぶくれができ、小豆大に。初めは透明の水ぶくれが次第に膿になり(膿疱)、破れてただれや潰瘍になります。この段階までは人に感染する可能性があるので、水ぼうそうにかかったことのない子供や妊婦さんとの接触は避けましょう。さらに1週間くらいのうちに膿疱はかさぶたになり、これがはがれ落ちると治ります。ここまで約3週間。痛みもだいたいここで治まります」
◆50代からリスク上昇! 予防接種をしよう!
帯状疱疹は60~70代がもっとも多いが、20~30代でも少し増え、40代では減り、50代から急増する傾向にある(グラフ参照)。
「20~30代は、幼少期に水ぼうそうにかかって獲得した免疫がやや弱まってくる時期で、働き盛りのストレスや過労も重なり、帯状疱疹にかかりやすい状況です。40代でいったん減るのは、子育て中に子供が水ぼうそうにかかり、ウイルスに接する機会が増えることで自身の抗体(免疫)の力が後押しされるからと考えられています」
つまり身近な人の水ぼうそうが帯状疱疹発症に少なからず影響すると考えられるのだ。
「昔は、孫と同居する高齢者には帯状疱疹が少ないともいわれました。でも時代は変わり、核家族で水ぼうそうの子供に接する機会は少なく、50代の免疫力は衰える一方。免疫力を低下させるがんや糖尿病などの生活習慣病も増えるため、帯状疱疹のリスクが一気に急増するようです」
2014年から、任意だった水ぼうそうの予防接種が定期接種となったことで、今後さらに水ぼうそうの子供は減るが、逆に帯状疱疹の発症は40代から増え始めることも予想されているという。
これを受けて2016年から、50才以上の成人を対象にした帯状疱疹の予防接種(自費)も始まった。
「高齢化が進む最近では、高齢になってから帯状疱疹の再発を繰り返すケースも。高齢者にとって帯状疱疹の痛みはつらいのです。ぜひ予防接種をおすすめします。そして日常の過ごし方も大切です。疲れやストレスをためないよう、食生活や睡眠環境にも気をつけて。認知症や病気の影響で痛みや不快感を訴えらえない可能性も念頭に、できれば毎日の清拭やボディータッチで、親御さんの健康チェックを心掛けてあげてください」
帯状疱疹の予防接種は皮膚科のクリニックなどで1回8000~1万円前後だ。
※女性セブン2019年9月5日号