星野源が約6年ぶりに実写映画主演を務めた時代劇コメディー『引っ越し大名!』(8月30日公開)。星野が演じたのは、引きこもりの侍。引っ越し(国替え)の責任者を命じられ、奮闘する姿が描かれる。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが指摘する。
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話題の映画『引っ越し大名!』は、『のぼうの城』の犬童一心監督、『超高速!参勤交代』の土橋章宏原作・脚本、主題歌がユニコーン。時代劇好きとしては、すぐさま駆けつけ案件である。早速、駆けつけてきた。
物語は、突然、幕府に姫路から大分に国替え(引っ越し)を命じられた姫路藩で、これまた突然、『引っ越し奉行』を命じられた引きこもりの書庫番藩士・片桐春之介(星野源)と、腕っぷしの強い幼なじみ(高橋一生)、前引っ越し奉行の娘で片付けのプロ(高畑充希)ら彼を助ける仲間たちの奮闘を描く。
私が、まず注目したのは、「引きこもり侍」のビジュアルである。城の書棚のせまい隙間でへらへらと楽しそうに本を手にする春之介。武士だから、ちょんまげがあるのだが、何か違和感が。おお、そうだ。春之介には、ふさふさとした前髪があるのである。おまけにまげもちょこんとしていて、正面から見るとどこにあるのかよくわからない。ハムスターのしっぽか。
江戸時代の男子といえば、額から頭頂部にかけて毛を剃ってつるつるにして「月代(さかやき)」と呼ばれる部分を作ることが多い。これは兜をつけた際に頭が蒸れないようにするためなどと言われるが、ここが剃りたてで青々としていることが、当時のモテ男の条件だったともいう。
春之介の髪型は、彼がいかにモテ男とは対極な存在なのかを、一発で表現しているのである。