警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、刑事や警察官の検視に関わる仕事の内容をレポート。
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今クールは法医学を題材にしたドラマが2本放送されている。1つは上野樹里主演の『監察医 朝顔』(フジテレビ系)、もう1つは大森南朋主演の『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』(テレビ朝日系)だ。
どちらも法医学者で解剖医を主人公にしているが、これらのドラマに欠かせないのが検視に携わる検視官や警察官だ。だが警察官が遺体を扱う実態がどんなものなのか、詳しく知る機会はあまりない。
まず「けんし」と検索すると、“検視”と“検死”という2つの言葉が出てくるが、その違いがよくわからない。そこで警視庁の元刑事に聞いてみた。
「検視とは本来検察官が行うものだが、現状は検視官や警察官がそれに代わって、遺体の死因を確認すること。犯罪性、事件性があるかないかを判断するものだ。検死は検視、検案、解剖を含み、検案は医師が遺体を見て調べて(見分)、死因などを判断するものになる」
この時、医師の検案によって作成されるのが死体見分調書だ。
ドラマでは事件現場によく現れる(臨場する)“検視官”だが、全ての所轄にいるのかと思うと、そうではないという。
「検視官は警視庁本部の鑑識課に属しているが、その人数は当時で10~12人ぐらい。鑑識課に検視官室があり、昼間は全員がそこにいるが、夜間は1人が夜勤でいるだけ」
監察医や法医学者よりもその人数は少ないのだ。増えた今でも警視庁で25名、警察庁でも検視官は357名(H29年度)しかいないが、それでも臨場率は増えたと聞く。だが、絶対数が少ないため、死体がある現場全てに出向くことはできない。
「包丁が死体に突き刺さっている、メッタ刺しにされているとか、拳銃で撃たれたとか、明らかに殺人とわかる犯罪死体の場合は、最初から検視官が現場に行く」
検視官になるには、基本的に刑事の経験が10年以上、警察大学で法医学研究科を修了し、階級は警部か警視、その上で刑事部長から任命された者がなる。資格が与えられるのは任命された時期のみ。所轄には検視官あがりの刑事課長もいるが、刑事課長になった時点で検視官ではなくなってしまうというのだから、その人数はなかなか増えない。
「自宅で亡くなっていた、自殺かもしれないなど死因がわからず、犯罪による死亡の疑いがある変死体の場合は、まず刑事が現場に行く。そこで事件性があると判断した場合や疑わしい場合に検視官を要請することになる」
警視庁のH29年度の死体取扱総数は20527体、そのうち検視官の臨場総数は10808件、事件臨場は10306件、解剖立会が502件だ。
そうはいっても、検視した刑事だけで死因を判断するわけではない。
「刑事は現場を見て環境捜査を行い、遺体の細かな状況、傷やアザなどがないかを確認して写真に撮り、死因を判断する。さらに検視官にそれらを送って、その死因でよいか判断を仰ぐ」
環境操作とは現場の周辺を調べたり、もめ事がなかったか、寝たきりだったかなどの状況を調べることだ。