ばぁばこと、94才の料理研究家・鈴木登紀子さんが教える旬のレシピ。今回は、鯛のあら。一見調理が難しそうにも感じるが、どうやって活用したらいいのだろう?
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近年「旬がなくなった」といわれます。魚は養殖、野菜はハウス栽培が当たり前になり、また、世界中からあらゆる食材が輸入されています。日本はまだまだ暑い季節ですが、南半球は冬ですもの。一年中すいかが食べられても不思議はないわね(笑い)。
今回ご紹介する「鯛めし」の鯛も、旬は初夏ですが、いつでも手に入るようになりました。
鯛はいろいろな食べ方ができて、とても使い勝手のよいお魚です。暑い日の酒肴には、さっぱりした口当たりながらうまみが引き立つ、鯛の昆布締めなどはぴったり。
そして鯛はあらもよいだしになります。よく、あらだけをパックにしてお安く売っていますでしょう? あれはとってもよいおだしが取れるのです。ちょっと食欲がない、冷房で体が冷えた…という時には、温かいおそうめんのだしにするとよろしいわ。あらとはいえ身もついておりますから、あとはねぎを添える程度で、上品な温麺になります。
今回は、鯛の切り身も加えて、簡単でおいしい「鯛めし」にいたしましょうか。あらはゆでて身を外し、そのゆで汁と昆布でおだしを取っておきます。切り身は漬け汁につけて、汁ごと炊き込んで、鯛のうまみをあますことなくいただきます。
そしてお椀は「白魚もどきのお椀」を。せん切りにしたかまぼこを白魚に見立て、卵でとじた汁椀です。
白魚は、なかなか私たち庶民が食卓で楽しめるものではありません。かまぼこを細く切って白魚に見立てるなんて、昔のお母さんたちの遊び心は粋ですね。かまぼこの香りがふんわり立って、なんともやさしいお味のお椀です。体調がすぐれない時にもぴったりよ。
◆鯛の仕事
(1)鯛の切り身は酒としょうゆをふり、下味をつけておく。
(2)あらは昆布とゆでてだしを取る。大きめのボウルに菜箸数本を交差させて並べ、その上に平ざるを置き、鯛の身とだしを分ける。
(3)氷水をかけて身を締め、ほぐしやすいようにする。
(4)あらかじめといで鍋で浸水しておいた米の水をくみ出し、同じ量のだしを入れて火にかける。鍋の蓋がカタカタ鳴ったら、あらから外した身と、鯛の切り身を漬け汁ごと入れて炊く。