痛みで食事が摂りづらくなったりと、発症するとなかなか厄介な「口内炎」。実は猫も口内炎になる。それも、人間より症状が深刻化しやすいそう…。今回はニャンとも痛い、お口のトラブル、猫の“口内炎”について解説する。
口内炎とは、歯肉、舌、頬の内側など口の中の粘膜が炎症する病気のこと。人間の場合、口の中にポツポツと点状にでき、数日で治るケースがほとんどだが、猫の口内炎は広範囲にでき、一生つきあわなければいけないケースも多い、とJVCC二次動物医療センター目黒病院センター長の佐藤貴紀さんは言う。
「口内炎の疑いのある猫は、よだれがたくさん出たり、口臭がきつくなる、口が気になり、前足で口の周りをかく仕草が多くなる、口の周りを触られると怒るといった症状が見られます」(佐藤さん・以下同)
さらに進行すると、食欲不振に陥り、元気がなくなってぐったりしてくるという。
「猫の口内炎は気づきにくく、来院した時にはすでに口の中が真っ赤になるほど腫れてしまっていることが多いんです。猫は“痛い”と声に出して言えませんが、その代わりに、何度も前足で口の周りを触ったり、食べ物を拒むなど、行動や仕草で痛みを訴えます。おかしいと感じたら、すぐに動物病院を受診しましょう」
しかも、猫の口内炎は、ひどく痛むのが特徴だ。痛みや違和感から食事がしづらくなると、体重は減り、体力も落ち、ほかの病気を併発しやすくなる。口の周りを頻繁に触り、気にしているようなら、注意して!
口内炎の原因は、主に次の3つがあげられる。
【1】病気やストレス、薬剤などの影響で、免疫力が低下したため
【2】猫カリシウイルスや猫エイズなどに感染したため
【3】歯周病や歯肉炎など口腔内の病気による細菌感染
そのほか、口の中の傷に細菌が入ることで発症したり、ビタミン不足などの栄養学的な理由、さらにアレルギーや薬の副作用などが関与しているケースもあるという。
予防法は、それぞれの原因により変わってくる。
「免疫力の低下が原因の場合、しっかりと栄養を摂り、さらに免疫力を上げるサプリメントなどを取り入れるのもいいでしょう。ウイルス感染の場合はワクチン接種で予防できる場合も。また、家の外に出さないなど、ほかの猫との接触を避けることも重要です。そして細菌感染の場合は、定期的な歯磨きなど口腔内をきれいに保つことで防げます」
また歯磨きも、口内炎の予防に効果的。いざという時、口の中を見せてもらえるよう、子猫の時から口に触れて、慣れさせておくのもおすすめだ。
では、口内炎の治療にはどのような方法があるのか?
人間の場合は、患部に直接塗布する塗り薬などもあるが、猫の口内炎は広範囲で発症するため、塗り薬はほぼ使用しないという。
「細菌の働きを抑制する抗生剤や、炎症や痛みを抑えるステロイドなどの免疫抑制剤などの薬を内服します。薬によって口内炎の状態は緩和しますが、薬をやめると再び悪化することもあり、完治は難しいケースが多いです。そのほか、全身麻酔をかけて歯石を除去して口腔内を清潔にしたり、抜歯を行い歯肉の負担を軽減することもあります」
猫の口内炎は予防と早期発見が鍵となるのだ。
※女性セブン2019年9月12日号