新興政党ながら先の参院選で2議席獲得した「れいわ新選組」。旧態依然とした永田町に吹き込む新風を期待する声が高まっている。だが、『ヒトラーの正体』を上梓したばかりの政治評論家・舛添要一氏は、「手放しの礼賛は危険。慎重に検証すべき」と指摘する。
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先日、「NHKから国民を守る党」とナチス党の選挙運動の共通点について、発言しました。これには賛否がありましたが、他方で「れいわ新選組(以下、れいわ)の方がナチスに近い」「今後、国政で存在感を増すれいわを検証してほしい」といった意見がたくさん寄せられました。そこで今回は、れいわとナチス党の共通点について述べようと思います。
前もって言っておきますが、党首である山本太郎氏がヒトラーのような独裁者であるとか、差別的言説を行っていると言いたいわけではないので、ご承知ください。
さて、大前提の話をします。冷戦終了から30年近く経ちました。かつてのように右(保守)と左(リベラル)のイデオロギー対立をもって政界地図を描ける時代は終焉を迎えています。日本は自民一強時代を迎え、それに対峙するはずのリベラル代表格の立憲民主党は、何ら対立軸を見出せていない。
硬直化した政界に、変化をもたらす切り口(新たな争点)があるとすれば、上と下の対立軸です。一部の富裕層とそれ以外の大多数との格差は広がり、「分断」時代が到来しています。下層に位置する国民にしてみれば、政治は安定しているのに、なぜ私たちに富は配分されないのか、との不満が募ることでしょう。
世界中でこうした声が噴出しており、既得権を突き崩そうとする動きが盛んです。日本でそうした不満の受け皿となりつつあるのが、山本氏率いるれいわに他なりません。
このたび躍進したれいわの主張をざっと並べてみましょう。最低賃金1500円、奨学金返済免除、消費税廃止・所得税や法人税の累進課税、財政出動、野宿者支援…。こうした主張に通底するメッセージは明確です。
「国民を飢えさせない」
これは、ヒトラーの「労働者むけ政策」を彷彿させます。ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)や他国の侵略といった側面ばかり注目されるナチスですが、党の綱領には、小企業の保護や貧困家庭の教育費国庫負担など、労働者に訴える内容が多く盛り込まれています。
ナチスは右翼政党のように日本人に思われていますが、実はそうではありません。そもそもナチスはドイツ人がそう呼んだわけではなく、敵陣営による蔑称です。ジャパニーズをジャップと呼ぶようなものです。正式にはナチオナールゾチアリスティッシェで、訳すと「国家社会主義」。ドイツ国民のための社会主義といったところでしょうか。具体的には、日々労働に従事する一般大衆のための政党を意味します。