警察や軍関係の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回も前回に引き続き、刑事や警察官の検視に関わる仕事の実態を明かす。
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内閣府には「死因究明等施策推進室」なるものがあり、死因究明の状況把握や推進活動を行っているが、広く知られてはいない。H24年には死因究明等の推進に関する法律が成立し、H26年には推進計画が閣議決定されている。その目的には、犯罪死による見逃し防止や亡くなった理由を知りたいという遺族の思いへの対応などがある。
犯罪による死亡の可能性がある遺体は変死体とされる。犯罪による死亡と明らかにわかる犯罪死体の場合は、鑑識課の検視官が臨場する。だが、その数は全国的にも十分ではない。そのため変死体の検視は、所轄の刑事も行うことになる。警視庁の元刑事に、自身が経験した検視の現場について話してもらった。
「検視にはウエストポーチの臨場用カバンを持つ。中には七つ道具の透明のゴム手袋、マスク、ピンセット、綿棒、ペンライト、メジャー、温度計、頭や足のカバーなどが入っている。飛び散った血液は綿棒で取り、瞳孔の大きさ、外傷があれば傷が何センチか、遺体のある位置は柱からどれくらいかもメジャーで測る。ペンライトは性能がいいから、斜めに光をあてると靴跡が見えるんだ。刑事の腕章も現場では必須だ」
ドラマなどで見る事件現場で作業する鑑識の姿と同じだが、今と昔では違いがあるという。
「今は病気があるかもしれないから遺体は素手で触るな!と言われていて、ゴム手袋をはめなければならないが、昔は遺体の体温や状態がわからなくなるから素手で触れ!と怒鳴られたものさ」
刑事の時は、カバンに白手袋を常備していたというが、その時の癖で、今も仕事する机の中には白手袋が入っている。
「手袋だと不審物が送られて来た時に直接触らなくていいし、後々証拠になるような品に自分の指紋がついてしまうのも避けられる」
「検視では、着ていた服はハサミで切って脱がせ、身体全体に外傷がないか、アザや傷跡がないか確認し写真に撮る。左右の瞳孔の大きさを測り、首を絞められた時に見られる溢血点がないかまぶたをめくる。髪だけでなく陰毛の長さも測り、舌は状態を見てからリトマス紙をペタッとあてて毒がないか調べる。指紋を採って、肛門に体温計を入れて直腸温度を測り、事件性の有無を判断。検視官が臨場していなければ、これらを報告して死因を確認する」
殺人や事件性の疑いがあり現場保存が必要な場合は、遺体を移動させず現場で検視。事件性がない時やその場で検視できない場合は、検案する病院や署の霊安室に移動させて行うこともある。
首吊りの場合はそのままでは検視できないため、下ろさなければならないのだが、昔は、若い刑事が遺体を下ろす時、手練の刑事はコツを教えず見ているだけだったという。