ドラマ、映画、音楽、どの分野においても「韓流」は今や一大ジャンルとなっている。この分野でも“輸出規制”が行なわれれば日本のメディアが困難に直面するようにも思えるが、その可能性はあるのか。韓国事情に詳しいジャーナリストの高月靖氏が解説する。
「韓国には韓流コンテンツの輸出を減らせない事情があります。韓国の音楽市場は14億400万ドルほどと推計されており、日本の6分の1程度。この規模だと国内セールスだけではビジネスとして成り立たない」
韓国芸能界としては日本による“韓流コンテンツ締め出し”が最も避けたい事態だとみられている。かつて、中国国内での韓流コンテンツが制限されたトラウマがあるからだ。
2016年7月、韓国は北朝鮮の暴発への備えとして米韓合意のもと、THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の配備を発表。すると、中国政府がこれに激しく反発。中国国内で韓国製品などの不買運動が起こった。
「韓国国際文化交流振興院によると、中国における韓国の放送コンテンツは2016年の約7818万ドルから翌年は約1356万ドルに急落しました。実に6分の1の水準です」(高月氏)
中国側が正式には認めたわけではないが、今でも韓国ドラマの放送やK-POPアイドルのコンサートなどは制限されていて、「限韓令」と称される。そこで韓国側がとった苦肉の策が、韓流コンテンツの“脱韓国化”だ。高月氏はこう続ける。
「いま中国で人気の『威神(ウェイシェン)V』は、韓国の芸能事務所がプロデュースしているにもかかわらず、中国やタイ、香港、ドイツなどの出身者で固めており韓国人は一人もいません。『BOY STORY』という男性グループにいたっては、6人全員が中国人です」
日本でも減韓、断韓の流れが進めば韓国の芸能界にとって脅威となるのは間違いなさそうだ。
※週刊ポスト2019年9月13日号