失われた30年への懸念もある日本から見ればやはり眩いばかりの数字である。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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中国には億万長者が、いったいどのくらいいるのか? この疑問に直球で答えるレポートが発表され、大きな話題を呼んだ。レポートの題名は〈2019年版家庭資産サスティナビリティ報告書〉(=報告書)。建信信託と胡潤研究院が共同で調査した報告書だ。
このレポートを受けて多くのメディアがこれを扱ったが、『界面新聞』(6月3日付)は〈2019年版家庭資産報告:中国では11万家庭が億(日本円で約15億円)を超える資産を保有 もっとも多かったのはこの三つの地域〉というタイトルをつけて報じた。
こんな見出しをつけられると反射的に浮かぶのは深圳のある広東省と上海市、そして北京市である。そして、これは間違いではない。だが興味深いのは上位三つの順番だ。実は、億万長者が最も多かったのは、政治の都と呼ばれる北京なのだ。
まず中国全土でみると億万長者は対前年比で11.2%も増えているのだが、北京だけで見ると、一年で2500戸が新たに億万長者となり、計1万9900戸。その増加率は全体を大きく上回り14.4%となったのだ。
北京の次に億万長者が多かったのは広東省で、その次が上海というように続く。
興味深いのは、資産が億を超える家庭の中で、1億元(約15億円)以上を投資可能な資産として持っている家庭が半分以上にも達しているという事実だ。単に15億円の資産を持っているのではなく、15億円を投資できるということだ。全体で見たその割合は、11万戸に対して6万5000戸と、6割に達している。
また中国の億万長者は何で儲けたのかの項目では、80%が経営者、15%が不動産売買。そして残りの5%が株の取引だった。
アンケートによって明らかになったのは、億万長者は旅行と読書が趣味という人々で、次に挑戦してみたいことのベストスリーは、上からヨット、乗馬、サーフィンだったという。
それにしても官僚がこれに含まれていないのは不思議なことだ。賄賂を受け取っていた幹部たちの収賄額が巨額であったことは、反腐敗キャンペーンであまりにも有名だ。ということは表に出せない資産家は統計の枠外にあり、よって中国の億万長者は現実にはもっと多いとみて間違いない。