インターネットが普及しはじめたとき、誰でもネットでショップを営業できたり、販促活動ができ、さらにユーザーレビューという本音の評価を得られると大歓迎された。ところが、情報伝達に小回りがきく自由なネット空間を、グレーゾーンビジネスへと活用されるケースが増えている。その結果、違法サービス店が出現してしまった住宅街の戸惑いについて、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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東京駅から乗り換えなしで一時間弱ほどの関東某市のターミナル駅から、歩くこと15分。築十数年は経っていようかと思われる、住宅街に溶け込んだ普通の一軒家の前で立ち止まる。同行してくれた、近隣住民・丸井雄一郎さん(仮名・40代)が声を押し殺すように囁く。
「ここなんですよ。信じられないでしょう?」
丸井さんいわく、この一軒家には30代後半ほどの女性が一人で住んでおり、夜な夜な玄関前に立っては、見知らぬ男性を呼び込む。いわゆる違法マッサージ店を営業しているそうなのだが…。近隣にはコンビニも、飲食店もない、ありふれた新興住宅街だ。にわかに信じがたい話だが、付近の住民の間、特に小さな子供を持つ親たちに話を聞くと「いつか何か大きな問題が起きるのでは」と不安を口にする。噂は本当なのか。
筆者は丸井さんの協力を仰ぎ、件の一軒家が見渡せる位置の住民宅敷地に車を止め、見張った。すると、二時間ほどして、一軒家から細身の上下ジャージに身を包んだ女性が一軒家から出てきた。スマホを片手に周囲を見渡すと、またスマホに目を落とす。誰かと連絡を取っているのか。
「間も無く男が来るのでしょう。五分もしないうちにきますよ、きっと…」
丸井さんと息を潜めていると、本当に男が現れた。いかにも営業マン然とした、40~50代くらいの男である。女性と軽く会釈をした男は、そのまま女に促され、一軒家に吸い込まれていった。「ほら」と興奮気味な丸井さんだが、これでは中で違法なサービスが行われているか、全く見当もつかない。
男は、ちょうど一時間半経った後、女に見送られながら出てきた。またしても「ほら」と丸井さんは言うが、これだけではやはり、どうにも判断がつかない。そうこういっているうちに、今度はTシャツに短パン姿の、休日のお父さんといった出で立ちの30代半ばくらいの男がやってきた。一軒家から慌てて飛び出してきたのはあの女性だ。男性の腰に手を回し、そのまま家に招き入れた。しびれを切らした筆者は、かの女性が違法マッサージをしているという証拠がない、そう丸井さんに告げた。すると……。