「人間は死亡する10数年前から血圧が下がり続ける」ことを示す大規模追跡調査が存在する。
2017年に英エクセター大学の研究チームが報告した調査は、2010年1月~2014年11月の間に亡くなった約5万5000人の患者のうち、死亡前の20年間で6回以上血圧を測定した60歳以上の4万6634人のデータを抽出して、血圧の変化をたどった。
その結果、「60歳以降に死亡した人々の血圧は死の14年以上前にピークを迎え、以降は10年以上にわたって直線的に低下」していたという。さらに死の2年前からは血圧が急激に低下していたことがわかった。
例えば、60代の群の血圧は、死の14年前に平均146.3mmHgをピークにして、以降4年間横ばいした後、残りの10年間は右肩下がりだった。
この結果について小林病院理事長の小林祥泰医師が指摘する。
「この研究結果を踏まえると、中年期に高血圧になり、降圧剤を飲んできた人は、70代を超えると加齢による血圧の低下も踏まえて、降圧剤を減らしていくことも考える必要性があるといえるでしょう。降圧剤の効果と、加齢による血圧低下が相まって“下げすぎ”による認知症などのリスクにつながっている可能性もある。
『次第に血圧が下がっていく』という現象は、加齢による体重減少の影響が大きいという可能性がある。論文でも『体重が20kg以上減少した人は、平均で24.87mmHg血圧が低下し、20kg未満だった人でも平均15.91mmHgの低下がみられた』と報告されている。他にも、認知症、心不全などとの関連も示されています」
※週刊ポスト2019年9月20・27日号