普段はビール商戦で激しく競い合う関係の、キリンビールとサッポロビール。かつてはビールシェアで1位と2位(現在は2位と4位。第3のビールや発泡酒を除くビールだけに限ればサッポロは3位)だった両社が、「ソラチエース」というホップの誕生35周年イベントで「呉越同舟」のタッグを組んだ。そこにはどんな背景があったのか──。経済ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
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9月5日~16日までの間、キリンビールとサッポロビールが「ビアケラー東京」新橋店と銀座の「BEER TO GO」で、「ソラチエース誕生祭~こちらでソラチ、そちらでもソラチ~」を共同開催している。
キリンは今年2月から、飲食店や自社のオンラインショップで「ブルックリン ソラチエース」を発売。一方のサッポロも、4月から「SORACHI 1984」(缶商品)の通年販売を開始している。どちらもクラフトビールだ。
クラフトビール先進国の米国では、同ビールの市場は全体の中で13%弱を占め、通常のビールよりも単価が高いことから、金額ベースではその倍近くまで占有率がハネ上がる。
一方、日本のクラフトビールマーケットは、2年前の時点でシェアはわずか1%弱。ビールメーカーの中で最もクラフト市場の開拓に注力してきたキリンでは、この数字を2021年に3%まで高めたい意向を示しているが、米国に比べるとまだまだ途上だ。
これまで、クラフトビールに関してはキリンの孤軍奮闘の感が強かったが、キリンに次いで本腰を入れ始めたのがサッポロである。
キリンがクラフトビール専門の別会社、スプリングバレーブルワリーを擁しているように、サッポロにもジャパンプレミアムブリューという専門の別働隊があるが、そこで扱うクラフトブランドの販売を、今年1月からサッポロ本体に移管している。その決め手になったと思われるのが、前述した「SORACHI 1984」だ。