季節外れに異例の人事である。安倍内閣は8月30日の閣議で、読売新聞グループ本社の白石興二郎会長(73)をスイス大使に充てる人事を決定した(9月2日に着任)。新聞協会会長も務めた現役の新聞社会長が大使になるのは初めて。白石氏は決定と同時に読売新聞を退社した。
白石氏の経歴を見ても、静岡支局に始まり政治部、論説委員、巨人軍オーナーなど、いかにも読売の保守本流ではあるが、外交との接点は感じられない。なぜ彼が大使に抜擢されたのか。ベテラン政治記者が語る。
「今回の人事は、安倍首相と“首相の後見人”を自任するナベツネさん(渡辺恒雄・読売新聞主筆)との関係抜きには考えにくい。現在の社長である山口寿一氏が次の会長になるのは規定路線で、白石氏の処遇が注目されていた。そこでナベツネさんが安倍首相に大使として白石氏をプッシュしたのではないでしょうか」
4月までスイス大使を務めていた本田悦朗氏も、安倍首相の経済政策のブレーンとして知られていた。つまり2代続けて外務省以外から大使が送り込まれたことになる。
気になるのは、スイス大使とは外交のプロでなくても務まるような仕事なのか、ということだが、外務省関係者に聞くとあっさり、「そうですよ」と言う。