これまでは「長男の嫁」が義父の介護に身を尽くしても、遺言書に記載がなければ法的には遺産を一切受け取れなかった。それが今年7月からのルール改正により、義父を介護するなど「特別の寄与」がある親族は、相続人全員に対して財産分与を請求できるようになった。
だが円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏は、「実際に適切な対価を得るには高いハードルが残る」と指摘する。
「家庭裁判所に申請し、特別な寄与が認められれば、『介護職員を雇った場合にかかる金額×療養介護を行なった日数×裁量割合』との計算式で寄与分の金額が算出されます。しかし1年以上自宅での介護が続き、その間は無報酬で介護をしていた客観的証拠がある場合にのみ特別な寄与が認められるなど、様々な条件をクリアする必要がある」
もらえると思った寄与分がもらえなかったことにより、家族内に亀裂が入るリスクがある。だからこそ、「事後」よりも「事前」に解決しておきたい。
「介護の代償を求めたい家族の一員がいる場合、介護されている人も含めた家族全員で話し合いをしておき、遺言書に『介護してくれた長男の嫁に〇〇円を与える』など明記してもらうことが最善策です。親の側が介護をしてくれた人に寄与分を生前贈与しておくという手もあります」(橘氏)
※週刊ポスト2019年9月20・27日号