2019年に激変した相続制度。残された者の「争続」を避けるために役立つのが遺言書だ。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏が解説する。
「遺言書には、自分で簡単に作れる『自筆証書遺言』と、公証役場で作成・保管する『公正証書遺言』があります。今年から自筆証書遺言については、財産目録部分が自筆だけでなく、パソコンや代筆が認められるようになりました」
自筆の場合、詳細で正確な記入が求められるが、現実には間違いが多い。
「目立つのは、クレジットの借り入れや借金、連帯保証といった負の資産の記載漏れです。また正確な日付でなく『〇月吉日』となっている遺言書や、年度の記載がない遺言書は無効になります」(橘氏)
意外な落とし穴は「訂正の間違い」である。
「訂正箇所に二重線を引いて、その上から印鑑を押せば有効であると誤解する人が多いのですが、それでは訂正になりません。二重線と印鑑に加えて、文章の最後に『何行目の〇〇という文字を〇〇に訂正しました』と自筆で書かないと訂正が認められないので、注意してほしい」(橘氏)
失敗を避けるには公正証書遺言にするのがベターだ。
「ただし自筆証書遺言は来年7月から法務局で保管されるようになり、その際に形式に間違いがあれば、法務局が指摘してくれるようになります」(橘氏)
せっかく作った遺言書が無効となって、家族内に配分に異議を唱える人が出てきた場合、こじれることになるから注意したい。
※週刊ポスト2019年9月20・27日号