国際情報

韓国「疑惑だらけの新法相」任命強行で「反日」激化か

新法務大臣の任命の様子をテレビで見守るソウル市民(AFP=時事)

 次から次へと疑惑が持ち上がることを揶揄して「タマネギ男」と呼ばれた人物が、韓国の新法務大臣に任命された。韓国世論の半数以上が反対の声をあげる中、なぜ、文在寅大統領は渦中の人物を抜擢したのか。ソウル在住のジャーナリスト、藤原修平氏が分析する。

 * * *
 9月9日、韓国の法務部長官(法務大臣)に文在寅大統領の側近として知られる曹国(チョ・グク)氏が選ばれた。次々と疑惑が浮上する渦中の人を、文大統領が鶴の一声で任命した格好だ。

 これまでこの一件で、韓国社会は大荒れだった。5日には、文在寅政権を支持するリベラル系有力紙「ハンギョレ」にまで、チョ氏の任命に批判的な記事が掲載された。記事を書いたのは役職のない若手の記者だと報じられている。ところがその記事が、掲載からわずか4分で削除されてしまった。

 同紙によると、記事削除の理由は「ハンギョレの論調に合わない」からだという。だが、もともとハンギョレは保守系メディアの「中央日報」にいた記者たちが、「反共イデオロギーから脱却し、その上で自由な言論の場を開拓しよう」と1987年に立ち上げた経緯がある。今回の削除理由はハンギョレ設立当初の精神に反するものだとして、若手記者たちが猛反発。編集局長をはじめとする同社上層部に向けて「辞すべし」との声明を発表した。

 7日には、法相候補となったチョ氏の聴聞会が韓国国会で開かれた。議員による質疑は14時間にも及んだが、その多くはチョ氏の夫人と娘を含む不正疑惑について時間が割かれた。娘に授与された東洋(トンヤン)大学校総長名義の表彰状を、夫人が偽造していたという疑惑がそれだ。検察は聴聞会の日の深夜に、「私文書偽造」の疑いで夫人を起訴した。

 しかし、聴聞会は事実上中途半端に終わった。野党からの追及が激しかったと報じられているが、それでもチョ氏は表情一つ変えずに淡々と答えていた。聴聞会では新たな疑惑が提示されたわけでもなく、青瓦台関係者も「落ち着いて見ている」と余裕のコメントを出すほどだった。

 だからと言って、疑惑自体が払拭されたわけではない。そもそも法務部長官という職責を考えれば、疑惑がある人物は適任ではないはずだ。

 それでもチョ氏を擁護しようとする動きは、文在寅大統領だけでなく、青瓦台全体に広がっていた。チョ氏や妻、親族にかけられた疑惑を追及する検察の捜査を、「検察による内乱」と皮肉った青瓦台関係者すらいる。

関連記事

トピックス

中居正広氏と報告書に記載のあったホテルの「間取り」
中居正広氏と「タレントU」が女性アナらと4人で過ごした“38万円スイートルーム”は「男女2人きりになりやすいチョイス」
NEWSポストセブン
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波も(マツコ・デラックス/時事通信フォト)
『月曜から夜ふかし』不適切編集の余波、バカリズム脚本ドラマ『ホットスポット』配信&DVDへの影響はあるのか 日本テレビは「様々なご意見を頂戴しています」と回答
週刊ポスト
大谷翔平が新型バットを握る日はあるのか(Getty Images)
「MLBを破壊する」新型“魚雷バット”で最も恩恵を受けるのは中距離バッター 大谷翔平は“超長尺バット”で独自路線を貫くかどうかの分かれ道
週刊ポスト
もし石破政権が「衆参W(ダブル)選挙」に打って出たら…(時事通信フォト)
永田町で囁かれる7月の「衆参ダブル選挙」 参院選詳細シミュレーションでは自公惨敗で参院過半数割れの可能性、国民民主大躍進で与野党逆転へ
週刊ポスト
約6年ぶりに開催された宮中晩餐会に参加された愛子さま(時事通信)
《ティアラ着用せず》愛子さま、初めての宮中晩餐会を海外一部メディアが「物足りない初舞台」と指摘した理由
NEWSポストセブン
「フォートナイト」世界大会出場を目指すYouTuber・Tarou(本人Xより)
小学生ゲーム実況YouTuberの「中学校通わない宣言」に批判の声も…筑駒→東大出身の父親が考える「息子の将来設計」
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《妊娠中の真美子さんがスイートルーム室内で観戦》大谷翔平、特別な日に「奇跡のサヨナラHR」で感情爆発 妻のために用意していた「特別契約」の内容
NEWSポストセブン
米国からエルサルバドルに送還されたベネズエラのギャング組織のメンバーら(AFP PHOTO / EL SALVADOR'S PRESIDENCY PRESS OFFICE)
“世界最恐の刑務所”に移送された“後ろ手拘束・丸刈り”の凶悪ギャング「刑務所を制圧しプールやナイトクラブを設営」した荒くれ者たち《エルサルバドル大統領の強権的な治安対策》
NEWSポストセブン
沖縄・旭琉會の挨拶を受けた司忍組長
《雨に濡れた司忍組長》極秘外交に臨む六代目山口組 沖縄・旭琉會との会談で見せていた笑顔 分裂抗争は“風雲急を告げる”事態に
NEWSポストセブン
中居正広氏とフジテレビ社屋(時事通信フォト)
【被害女性Aさん フジ問題で独占告白】「理不尽な思いをしている方がたくさん…」彼女はいま何を思い、何を求めるのか
週刊ポスト
食道がんであることを公表した石橋貴明、元妻の鈴木保奈美は沈黙を貫いている(左/Instagramより)
《食道がん公表のとんねるず・石橋貴明(63)》社長と所属女優として沈黙貫く元妻の鈴木保奈美との距離感、長女との確執乗り越え…「初孫抱いて見せていた笑顔」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 中居トラブル被害女性がフジに悲痛告白ほか
NEWSポストセブン