身長168cm、体重は幕内最軽量の98kgという小兵・炎鵬(前頭11)が秋場所の土俵を沸かせている。その出で立ちは1990年代に小錦、曙、武蔵丸らハワイ出身の大型力士に対抗し、“技のデパート”と呼ばれた舞の海を彷彿とさせるが、取り口は大きく違う。
「立ち合いで正面からぶつからず、“お見合い”が多かった舞の海に対し、炎鵬はどんな大きな相手でも真っ向勝負でぶつかる。相手の下に潜り込み、力強い下手投げや右からのひねりで仕留めるスタイルで“ひねり王子”と呼ばれています。立ち合いで変化しないから、目の肥えたファンの評価も高い」(ベテラン記者)
炎鵬の取組になると、館内は大歓声に包まれる。その人気ゆえに“ターゲット”となることも多いという。若手親方の話。
「大人気の炎鵬は下位力士の中ではダントツで懸賞金が多い。その懸賞金を狙って対戦相手も潰しにくるわけです。とくに二所ノ関一門の大型力士と激しい一番が続いた。4日目は、炎鵬が『居反り』を決めにいったところ、松鳳山(前頭12)に押し潰された。3日目の琴勇輝(前頭9)戦では張り手を受け、右目に相手の指が入って目を真っ赤にしていた。ただ、激しい相撲に館内は沸き、さらなる炎鵬人気につながっている」
同じ宮城野部屋の石浦(前頭15)と炎鵬の2人は、横綱・白鵬の内弟子だ。
「白鵬はかねて、炎鵬が太刀持ち、石浦が露払いで土俵入りするのが夢だと公言してきた。2人が幕内で揃った今場所、ついに実現したが、白鵬が初日に敗れて2日目から休場。来場所も“師匠”の悲願を叶えるため、2人は幕内に残ろうと必死だったはず」(同前)
新入幕だった5月の夏場所では後半戦に6連敗を喫したが、同じ轍は踏まないという決意も固いはずだ。
※週刊ポスト2019年10月4日号