今年、阪神・鳥谷敬(38)や中日・松坂大輔(39)など、一時代を築いたプロ野球選手たちが進退を迫られているが、85年の球史に残る数々の引退劇のなかでも、「引き際を自分で決められる選手」は一握りだ。
たとえ一流選手であっても「望み通りの引退」を遂げた選手は少ない。
「名将・野村克也氏は、現役晩年を過ごした西武で、チャンスの場面で根本陸夫・監督から代打を告げられた。悔しさから『代打策なんて失敗してしまえ』と考えた自分に嫌気がさして『もう潮時かな』と思ったといいます。
ロッテ、中日で3度の三冠王を達成した落合博満氏も、1998年オフに日本ハムを戦力外となり、他球団からのオファーがなかったが引退を認めようとせず、引退試合やセレモニーはなかった」(スポーツ紙編集委員)
近年では、巨人の高橋由伸・前監督が、現役引退と同時に監督就任が発表されたことも物議を醸した。
「引退した2015年シーズンは代打で打率.309の成績を残し、現役続行の意向を表明していました。ところが、CSの敗退が決定し、原辰徳・監督の勇退と高橋監督の就任が発表された。
この年は巨人の4選手による野球賭博への関与が発覚。特に、そのうち2選手の関与が明らかになったのが、高橋監督の就任発表の翌日だったため、“野球賭博問題の幕引きを図るため引退させられた”という見方もされました」(スポーツジャーナリスト)
怪物・江川卓氏の引退劇も「後味の悪さを残した」と見る向きがあった。
「8年連続で二ケタ勝利をあげた現役9年目、わずか32歳での引退でした。長年の右肩痛で“禁断のツボに鍼治療を受けた”と発言したことで、入団の経緯もあって“引退の裏にも何かあるんじゃないか”といった印象を受けた人もいた」(同前)
※週刊ポスト2019年10月4日号