安倍政権内の権力構造は改造をきっかけに大きく変質しつつある。安倍晋三・首相は第2次政権で返り咲いてからの7年間、官邸の実務を菅義偉・官房長官に任せ、自らは「外交の安倍」として外遊三昧だった。結果、内政の実権を「影の総理」の菅氏に掌握されてしまった構図が浮かび上がる。
その安倍首相と菅氏はこれまでは役割を分担し、互いに利用し合う関係だった。だが、ポスト安倍の後継者選びをめぐって、2人の利害がいよいよ衝突する。
自民党総裁の残り任期があと2年となった安倍首相は、岸田文雄・自民党政調会長と茂木敏充・外相と加藤勝信・厚労相を“後継者候補”として忠誠心を競い合わせるために重要閣僚に起用した。
内閣改造から早々に、菅氏の側近の大臣や岸田派、麻生派、二階派の新閣僚の新旧のスキャンダル情報が流出しているのも、自民党内がポスト安倍をにらんだ“仁義なき戦い”に突入したことを物語っている。
そこで菅氏が安倍首相の傘下にある岸田、茂木、加藤氏らに対抗する自前の総裁候補に育てようとしているのが河野太郎・防衛相と小泉進次郎・環境相だ。河野氏は麻生派だが、いまや麻生氏より菅氏の“庇護”下にある。小泉進次郎氏も大臣就任後の共同インタビューで菅氏のことを、「何かを変えようと思い、変えられるところを常に探している人。私もそういうタイプだと思っている」と絶賛するなど、すっかり“菅チルドレン”だ。
いつの間にか、ポスト安倍候補の顔触れも変わった。永田町では少し前まで、岸田氏と石破茂氏、菅氏に加藤勝信氏を加えた4人が「岸破義信」と呼ばれて有力候補に名前があがっていた。しかし、いまや菅氏が担ぐ河野太郎氏、進次郎氏と、安倍首相が引き立てようとしている茂木氏、加藤氏が「河泉敏信」と呼ばれ、新たな総裁候補として脚光を浴びている。
安倍首相と総裁選を争った石破氏、首相と当選同期の岸田氏は“過去の人”として扱われ、総裁候補の世代交代が行なわれたのだ。