4月から働き方改革法が施行されるなど、働き方に注目が集まっている。ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)がヒットしたように、定時までに効率よく成果を上げ、休日は次の仕事に向けてうまくリフレッシュして…そう考える人も少なくない。そんな“今時のデキる社員”は、どこにいるのだろうか。
今年7月に刊行された『本業はオタクです。シュミも楽しむあの人の仕事術』で仕事と趣味を両立する多くのオタク女子たちに取材した劇団雌猫のメンバーである著者・ユッケさんは、「オタクには、いまの時流に合った働き方を体現する“デキる人”が多い気がする」と語る。
「アニメや漫画はもちろん、舞台でも声優でもアイドルでも、何らかの“オタ活(オタク活動)”をしている人の中には、仕事へのモチベーションが高い人もたくさんいることが今回、取材してよくわかりました。というのも、オタク趣味は、舞台を観に行ったり、アニメをリアタイ(リアルタイム視聴)したりと、時間の制約が多いから、自分の時間を確保しないと趣味そのものができなくなってしまうからです。
例えば、特定のアイドルや俳優など、自分が応援する“推しメン”の出ている公演を全部観たいと思ったら、平日も18時や19時といった開演時間に間に合うように早めに退社しないといけないし、時には平日の昼間に開催されるイベントもある。そうすると、必然的に“明日やるべきことも今日終わらせる”働き方が身に付いてくるんです」(ユッケさん・以下同)
とはいえ、常に趣味を最優先するわけではなく、やるべきことには手を抜かないのが、デキるオタク社員。
「書籍で取材したあるかたは、『早く帰ってばかりいるとなんとなく申し訳ないから、退勤後に観劇の予定がない日は残業してでもたくさん仕事を片づけておく』のだそうです。予定のはいっている日は早く帰りたいから、朝は他の人よりも早い時間に出社して、通勤中も仕事をしたりと、スキマ時間を使って効率的に、早く帰るための努力をしていると言っていました。
毎日激務で夜勤もある看護師の方からは、『オタ活で地方に遠征したり、徹夜でコスプレ衣装を作ったりするので、その体力で仕事もバリバリ片付けている』という声もあります。“体力がある若い人”というと、“学生時代運動部だった人”など、オタクとは遠いイメージがあるかもしれません。でも、実は今の働くオタクたちも意外とタフなんです」
◇同人誌制作の経験からトラブルにも冷静に対処?
短いスパンで衣装や同人誌の制作をするうちに、「追い詰められても死ぬ気でやればなんとかなる」ことを知っているオタクたちは、本気を出せば超人的な体力と集中力を発揮できるし、トラブルが起きても冷静。仕事と趣味を完全に切り分けているから彼女たちは、仕事を翌日へ持ち越すことを嫌い、趣味が仕事の妨げになるような遊び方もしないという。
一方で、趣味と仕事を関連づけることで、モチベーションを上げているオタクもいる。
「漫画やアニメが好きなのに、絵を描くのが苦手なオタクもたくさんいます。そういう人たちの中には、漫画家やアニメーターにはなれなくても、漫画編集者など、好きなことに関連した仕事に就いている人も多い。取材した中には、アイドルが好きで芸能マネジャーになった人や、ソーシャルゲームが好きでアニメの制作進行の仕事に就いている人もいます」
陰ながらでも自分の応援する“推しメン”や好きなエンタメ作品を支えられるとあれば、彼女たちの仕事のモチベーションは常に最高潮だ。
「趣味を仕事に生かせるのもメリットだと思います。例えば、スマホにたくさん保存している好きなアイドルやキャラクターの写真を作家さんに見せて『今はこういうファッションや髪型の男の子が流行ってますよ』とアドバイスできるのは、漫画編集者として大きな強み。
今時のイケメンについて細かくリサーチするのが苦にならないので、取材でアイドルや俳優に会ったときも、差し入れやメンタルケアの面で、オタクではない人にはできないような細かい気配りができたりもします。大好きな漫画やアイドルたちの“舞台裏”を知っていると、お客さんとして漫画や舞台を観た時の感動も一層強くなり、さらに仕事へのモチベーションが高まるようです」
◇仮説思考、ロジカルシンキングでオタク力を発揮