相続をめぐり親族関係がメチャクチャになるのは見るに堪えないもの。それを回避する方ために有効なのが弁護士を立てることだが、親族間の話に弁護士を入れることに抵抗がある人も少なくないだろう。父と叔父が遺産をめぐり対立したが、弁護士抜きで話し合ってほしい場合、どうすれば良いのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
大学生です。先日、祖父が亡くなり、相続をめぐって父と叔父が対立し、ついに互いに弁護士を立てる事態に。でも、話し合えばわかり合えると親戚一同、みなそう思っているのですが、弁護士の存在が直接対話を実現させません。こうなると、双方が弁護士を立てた時点で、後戻りはできないのでしょうか。
【回答】
兄弟間の紛争を心配した親戚が、直接の話し合いの場を設けて和解に乗り出すことは、ごく普通にあることです。なお、一方側の弁護士だけが立ち合うことはできません。案件を受任した弁護士が、相手方も弁護士に依頼していることを知っている場合、その承諾を得ずに相手方本人と直接交渉することは、特別に正当化する理由がない限り、日弁連が定める弁護士職務基本規程に違反します。
これに対して、親戚が仲介の労をとることについての制約はありません。まだ裁判所に調停や裁判が提起されていない段階のようですが、仮に手続きが始まっていても、その点は変わりありません。
ただ、直接交渉が破綻したからこそ、冷静かつ客観的に対応できる弁護士を委任したと考えられるので、詳細を知らない外部の人が、弁護士抜きの直接面談を勧めるのは慎重に考えるべきです。それでも兄弟の紛争が直接協議で解決すれば結構なことですが、弁護士報酬の問題が残ります。