「死ぬということは、生きているよりいやなことです。けれども、喜んで死ぬことができれば、くだらなく生きているよりは幸福なことです」
作家の谷崎潤一郎はそう語ったが、晩年は狭心症に悩まされ、カテーテルの出し入れに苦しんだ。文壇の天才も安らかな最期は迎えられなかった。しかし現代は、知識と工夫次第で「喜んで死ぬ」ことができるというほど、安らかな死を選べる時代になった。自宅で死を選ぶ人が増え、実際にそれを実現させているのだ。
その一方で、病院で死ぬ選択をした方がいい場合もある。早期緩和ケア大津秀一クリニック院長の大津秀一さんはこう言う。
「痛みなどのつらい症状が特に強い人は病院の方がきめ細かい症状緩和を受けられるメリットがあります。また、在宅では医療・介護体制に不安のある人も、常時プロがいる病院の方が安心感が得られるでしょう」
また、ある程度までは自宅で過ごし、最期はケアの行き届いた病院で迎えるのがいいケースもあるようだ。
「例えば、床ずれ防止のために数時間ごとに体の向きを変える体位変換といったケアに関しても、病院の方が人手もスキルもある。また、家族仲によっては、世話されることそのものがストレスになる人もいらっしゃいます」(大津さん)
もちろん在宅と同じように病院も「選び方次第」ということに変わりはない。大津さんは、こんな質問をしておくことをすすめる。