健康かどうかを見極める基準として用いられるBMI(体格指数)。身長に見合った体重かどうかを表わす指数で、体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出される。BMIが18.5~25未満が正常値で、それより低ければ痩せ形、高ければ肥満となる。健康診断などで25以上の値が出ると食生活の改善を促されるなど、年齢を問わず「痩せる」よう指導されることが多い。
しかし、近年の研究では、肥満よりも「痩せ」のほうが死亡率が高いことが明らかになっている。国立がん研究センターの大規模追跡調査を解析した結果によると、日本人の男女ともに、BMI19未満の痩せ型のほうが、同30以上の肥満型よりも死亡リスクが高いことがわかった。
高齢者に限った研究調査でも顕著にその傾向が現われた。北海道大学大学院などによる、約2万7000人の高齢者(研究開始時点で65~79歳)を11年以上追跡した大規模調査では、〈BMIが20から29.9の間で総死亡リスクが低く、それより痩せている場合、痩せの程度が強くなるほど総死亡リスクが上昇することが確認〉されている。
BMIが最も低い16未満の総死亡リスクは、男性で基準値(同20~22.9)の1.78倍、女性で2.55倍にも達していた。その一方で、BMIが最も高いグループでは、男性の総死亡リスクが変わらなかった。秋津医院院長の秋津壽男医師が語る。
「脳梗塞や心筋梗塞も、肥満型より痩せ型の人のほうが罹患リスクが高いというデータがある。脂肪やコレステロールは血管を作る材料でもあるので、これらの摂取を過度に制限すると、血管のしなやかさが失われてしまうのです」
高齢者のむやみなダイエットには、重大な危険が潜んでいる。
※週刊ポスト2019年10月11日号