高齢者にとって、「孫の相手をするのが老後の一番の幸せ」という考えは、幻想かもしれない。『下流老人と幸福老人』などの著書があるカルチャースタディーズ研究所代表で三浦展氏が65歳以上の男女の幸福度について調査したところ、1人暮らし男性は孫がいないほうが幸福度が高かった。
この調査では、65歳以上の1人暮らしの男女に「幸せか否か」を尋ねたところ、「孫がいる女性」の73%が「幸せ」と回答したのに対し、男性は37%にとどまり、男女差が見られた。一方、「孫がいない男性」の43%が「幸せ」と回答した。
近年は「孫疲れ」なる言葉も登場し、孫と過ごす時間が増えるほど自分の時間が奪われ、出費も増大するなど、孫が重荷となる現実が浮き彫りになっている。
「とくに高齢の独居男性は女性に比べて普段から孫との付き合いが少ないので、孫と幸福度が結びつきにくい」(三浦氏)
孫ではなく我が子の存在が負担になることもある。つじかわ耳鼻咽喉科(大阪府門真市)の辻川覚志院長が2012~2014年にかけて、60歳以上の男女約1000人の聞き取り調査をした結果、配偶者や子供など家族と同居をしている人は、独居の人よりも生活の満足度が低かった。
親子や夫婦関係は皆が良好であるとは限らず、険悪な家族関係はストレスにしかならないということか。
※週刊ポスト2019年10月11日号