電車が走る音を言葉で表現すれば、「ガタンゴトン」だろう。では、新幹線の走る音は何と表現するべきか。うまく言い表せない理由を、早稲田大学鉄道研究会が考察する。
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東京のガード下では、電車が走ると話すこともままならない程うるさくなる。電話の途中だろうが、恋人と話していようが、あるいは重要な商談の最中だろうが、ガードの近くにいたならば電車が通るたびに会話は遮断される。
また、電車の車内ではガタンゴトンという線路の音や床下からモーターの唸る音が聞こえてくる。では、同じ電車でも新幹線はどうだろう。「新幹線の走る音」と聞いて、あなたはイメージできるだろうか。ガタンゴトン? シュー? うまく想像できないのではないだろうか。
今回は在来線と新幹線を音の面から比較したい。まずは在来線についてだが、実は在来線の騒音については法的規制がない。極論を言えば、ジェットエンジンを積んだ車両が住宅街の中の線路を走ることも可能なのだ。
しかし、法的規制がないとはいっても環境省の指針はある。その指針を要約すると、新設の在来鉄道(新線)に関しては〈昼間(7~22時)については60dB以下、夜間(22時~翌日7時)については55dB以下〉、大規模改良線に関しては〈騒音レベルを改良前より改善すること〉となっている。
この指針に法的強制力はなく、あくまで目安ではあるが、小田急電鉄が近隣住民に騒音被害訴訟を起こされた際、東京地裁はこの指針を参考にしたうえで明確な基準を策定し、被害を認定した。これにより在来線も、法的規制がないとはいえ、騒音対策を迫られるようになったのだ。最近の例としては上野東京ラインが挙げられる。上野東京ラインは線路の両側面を高い壁で囲まれている。これは防音壁であり、騒音対策の“目に見える”設備だ。
それでは、最近では在来線といえども騒音被害が裁判所で認められているのに、ガード下はなぜうるさいのか。まずは法的側面から見てみよう。端的に言うと、先の指針はすでに建設された路線に関しては適用されないからだ。東京のうるさいガードの上を走るのは、中央線や山手線、京浜東北線である。これらが走る架道橋は一部を除き、開通した明治、大正、昭和の時代から架け替えられることなく現在に至っている。