薬を飲むことで健康になれる──そんな“常識”をただ真に受けていると大きな落とし穴が待っていることがある。毎日たくさんの薬を飲む患者にとっては、その効果を信じ続ける生活のほうが居心地はいいが、自らの将来の健康を考えるなら、“不愉快な真実”にも目を向けなくてはならない。
生活習慣病のなかで最も患者数が多いのが高血圧症だ。厚労省の調査(2017年)によると、患者数は993万人にのぼる。血圧が高くなると全身にはりめぐらされた血管の動脈硬化が進み、脳梗塞や脳出血、心臓肥大や心筋梗塞など重篤な合併症を引き起こすリスクがあり、これを防ぐため実に70歳以上の4割が降圧剤を服用している。
しかし、病気を防ぐはずの降圧剤によって「脳梗塞の発生率が2倍になる」というデータがある。2007年に論文をまとめた東海大学医学部名誉教授の大櫛陽一氏が説明する。
「高血圧症と診断された脳卒中患者1万5504人と一般住民2万2227人を対象に、降圧剤を使った治療を受けた人とそうでない人とを比較しました。すると、降圧剤を服用した人は、しなかった人と比べて59歳以下では平均2.1倍、60歳以上では平均2.3倍も脳梗塞を起こすリスクが高くなっていたのです」
この結果について秋津医院院長の秋津壽男医師(内科)はこうみる。
「血圧を下げすぎると血流が悪くなって血栓が詰まりやすくなり、脳梗塞リスクが増加することが知られています。家で測定するよりも病院で測定するほうが数値が高く出やすい『白衣(仮面)高血圧』は高齢者に多いといわれています。この論文の結果は、降圧剤自体が脳梗塞を引き起こすというより、過剰に処方されてしまって低血圧に陥る人が多いということではないでしょうか」
安易に薬に頼らず、生活習慣の見直しをまず徹底することが肝要だ。
※週刊ポスト2019年10月18・25日号