政治評論家・小林吉弥氏(78)には、街を歩いているときに気になって仕方がないことがあるという。
「イヤホンをした若者が、歩きながらぶつぶつ話しているのをよく見かける。あれは不気味。怖いです」
近頃では自分が話す声も拾ってくれる「通話ができるワイヤレスイヤホン」が登場し、コードもなく携帯を手離していても電話ができるようになった。
「独り言を言っているのか?」と思ったら、カバンやポケットに携帯を突っ込んだまま、誰かと通話をしている。
「ちょっと前までは携帯で話す際は他人に聞かれないように、一度立ち止まって場所を移動し、物陰で遠慮がちにしたものです。いまはイヤホンだけしていれば、携帯端末自体を触らなくても電話できてしまうらしい。もう電話しているという感覚さえないのかもしれませんね」
周囲に迷惑をかけていると省みる姿勢も一層薄れてきていると小林氏は嘆く。
「最近は優先席で携帯ばかり見て、高齢者が立っていても平然としている若者が増えた。周囲を気遣ったり『忖度する』ということができないんですね。どこか遠くにいる人と繋がることがあまりにも簡単になって、目の前の世界が今まで以上に見えなくなっているように思えます。その象徴が、あの“イヤホン電話”なのではないでしょうか」
※週刊ポスト2019年10月11日号